2019年暮れの永田町は、「桜を見る会」一色に染まった。安倍政権にとって「さくら」は触れられたくない話題だが、一方で東京都の「さくら」問題はまったく話題にされることなく、それが小池都知事を悩ませている。
東京都における「さくら」問題とは、小池百合子都知事の肝いりで都電荒川線を“さくらトラム”へと改称したことに端を発する。
東京都が都電荒川線の愛称を“さくらトラム”にすると発表したのは2017年4月。“さくらトラム”は一般から公募され、集まった候補から選定された。選定理由は、都電荒川線の沿線には桜の名所が多いからというものだった。
総延長が約12.2キロメートルの都電荒川線は、東京に残った最後の都電として沿線住民から親しまれる。沿線には、飛鳥山や面影橋(神田川)、三河島水再生センターなど桜の名所がいくつかある。愛称が沿線に咲き誇る桜と路面電車を意味するとラムを組み合わせた “さくらトラム”になるのは自然に感じるかもしれない。
しかし、都電荒川線の沿線で有名な花といえば、バラであることは衆目一致している。実際、愛称を発表する都知事会見で、小池百合子都知事もバラが有名であることは認めている。それにも関わらず、バラは無視されて“さくらトラム”への改称は強行された。
これだけだったら、さして問題視されなかったかもしれない。昨今、鉄道各路線は利用者に親しみを持ってもらうべく、愛称をつける傾向にある。東武鉄道の野田線が“アーバンパークライン”、JR青梅線の青梅駅−奥多摩駅間を“東京アドベンチャーライン”といった具合だ。愛称をつける狙いは、沿線に親しみを持たせるのと同時に、少しでも利用者の減少を食い止め、沿線外から利用者を呼び込むことにある。
都電荒川線を“さくらトラム”と呼ぶのも、その潮流に乗った施策と解釈すれば理解できなくもない。それほど目くじらを立てる話ではない――と思ってはいけない。
なぜなら、東京都は路線図や都営地下鉄各駅の案内表示で“さくらトラム”を積極的に使用しているからだ。そして、正式名称であるはずの都電荒川線をカッコの中に押し込んでいる。この表記では、“さくらトラム”が正式名称になったかのように錯覚してしまう。
してから、東京都交通局は“さくらトラム”周知を積極的に進めている。
あまりにも強引な東京都の姿勢は、かつて国鉄から民営化したJR東日本が国電をE電へと改めた姿と重なる。E電は、いまやJR東日本の黒歴史として封印されつつあるが、東京都交通局も同じ轍を踏む可能性が高いと言わざるを得ない。それでも、東京都交通局は“さくらトラム”を翻す気配をいっこうに見せない。そして、“さくらトラム”の使用開始から半年後には、都電荒川線の駅ナンバリングに「SA」を採用した。
1/5(日) 11:02配信
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