インターネットが異なる形で使用されるようになり、テレビの視聴率が下がることは数十年にわたり予測されてきた。しかし、米国人のテレビや動画の視聴は過去25年間で実は増加している。
ペースの速い現代社会には、気を紛らわしてくれるものが他にも多く存在するのに、なぜ人々はテレビや動画を長時間見続けているのだろうか?
ロンドン・ビジネス・スクールのパトリック・バーワイズ教授と、南オーストラリア大学の上級研究者のスティーブン・ベルマン、バージニア・ビールが行い、広告研究ジャーナル(Journal of Advertising Research)に掲載された新たな調査によると、その理由はリラックスして現実逃避をしたいという私たちの心理的ニーズをテレビの視聴がいまだに満たしていることに加え、時間をつぶすための他の活動よりもはるかに安く、ますます利用しやすくなっていることにある。
新たな調査では、ネットを使わないテレビの視聴が過去25年間一定の水準を維持してきたことが示されている。一方でネット上での視聴は、テレビや動画の総消費量を15%ほど増やしてきた。私たちは現在平均で、人生の4分の1を動画を見て過ごしていて、その大半はいまだに従来型のテレビを使ったテレビ放送、あるいは録画によるものだ。
座って行う活動が増えたことで、心身の健康に多くの悪影響が生じていることが示されてきたが、一方これまでのメディア研究からは、テレビを視聴することで人々はリラックスし、少なくとも一時的に毎日の心配事から解放されることが示唆されてきた。
新たな調査は、脳波記録(EEG)と反応時間の測定を活用した実験室を基盤とした研究結果をまとめ、この説を実証している。研究者らは、テレビや動画の視聴が「目が覚めた状態の快適なリラクセーションに結び付けられた脳波を生み、認知能力を吸収することで視聴者の注意を他のものから引き離してくれる」ことを発見したのだ。
研究者らは、テレビの視聴が過去と同じ基本的な心理ニーズの一部をいまだに満たしていることからテレビの視聴が増えたと結論づけている。しかし現在では、1日を通してますます多くの場所でこのようなニーズを満たす機会が増えている。
革命的ではなく進化的
平均的な米国の成人(18歳以上)は現在、1日に6時間近くテレビや動画を見ている。これは起きている時間の30%ほどだ。そして、この根底にあるパターンは私たちが思うほど変化していない。
先述の研究では「1970年以降にテレビや動画配信の技術が急増したことでより複雑な視聴パターンが生まれたが、これまでの変化は進化的なもので革命的なものではなかった」と述べている。著者らは、人々がいつどこで、どのように、そしてなぜテレビを見るのかはほとんど変わっておらず、新たな視聴パターンは主に古いものに取って代わるのではなく追加されただけだと述べている。
嫌な上司や請求書、別れを忘れさせてくれるテレビ
この調査の特に興味深い点は、テレビを視聴することが(少なくとも視聴している間は)心配事から逃れる上でこれほど効果的な理由だ。著者らは、画面の動く絵を追うことは自動的に多大な認知能力を使っており、刺激に対してボタンを押すといった副次的な作業の反応時間の遅さにそれが反映されている、と述べている。
つまり、テレビを見ることで文字通り、他のことから心が離れるのだ。そうすることで、ひどい上司やまだ支払いが済んでいない請求書、個人的な問題など考えたくないことについて考えるのをやめることができる。
若者はネット上を含め多くの方法でテレビを見ているが、ミレニアル世代の50%以上はいまだに従来型のテレビを使っている。また、テレビの全視聴時間の増加を主にけん引しているのは高齢者ではない。テレビを視聴する時間は年齢が上がるほど実際に増加するが、今回の研究では、長期的な視聴時間の増加において人口構造の変化が原因となっている割合は非常に少ないと主張している。
研究者らはまた、テレビとラジオの間に興味深い違いを見出している。ラジオを聞くことの大半は副次的な活動で、どこでいつ、どのように聞くかはテレビの視聴とは非常に異なるものだ。ラジオには視覚処理が関わらないため、テレビを見るよりも精神的な負担が少なくて済み、主要なタスクの反応時間に大きな影響を持たないようだ。
全文はソース元で
1/2(木) 19:00配信
フォーブス
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200102-00031587-forbes-bus_all
ペースの速い現代社会には、気を紛らわしてくれるものが他にも多く存在するのに、なぜ人々はテレビや動画を長時間見続けているのだろうか?
ロンドン・ビジネス・スクールのパトリック・バーワイズ教授と、南オーストラリア大学の上級研究者のスティーブン・ベルマン、バージニア・ビールが行い、広告研究ジャーナル(Journal of Advertising Research)に掲載された新たな調査によると、その理由はリラックスして現実逃避をしたいという私たちの心理的ニーズをテレビの視聴がいまだに満たしていることに加え、時間をつぶすための他の活動よりもはるかに安く、ますます利用しやすくなっていることにある。
新たな調査では、ネットを使わないテレビの視聴が過去25年間一定の水準を維持してきたことが示されている。一方でネット上での視聴は、テレビや動画の総消費量を15%ほど増やしてきた。私たちは現在平均で、人生の4分の1を動画を見て過ごしていて、その大半はいまだに従来型のテレビを使ったテレビ放送、あるいは録画によるものだ。
座って行う活動が増えたことで、心身の健康に多くの悪影響が生じていることが示されてきたが、一方これまでのメディア研究からは、テレビを視聴することで人々はリラックスし、少なくとも一時的に毎日の心配事から解放されることが示唆されてきた。
新たな調査は、脳波記録(EEG)と反応時間の測定を活用した実験室を基盤とした研究結果をまとめ、この説を実証している。研究者らは、テレビや動画の視聴が「目が覚めた状態の快適なリラクセーションに結び付けられた脳波を生み、認知能力を吸収することで視聴者の注意を他のものから引き離してくれる」ことを発見したのだ。
研究者らは、テレビの視聴が過去と同じ基本的な心理ニーズの一部をいまだに満たしていることからテレビの視聴が増えたと結論づけている。しかし現在では、1日を通してますます多くの場所でこのようなニーズを満たす機会が増えている。
革命的ではなく進化的
平均的な米国の成人(18歳以上)は現在、1日に6時間近くテレビや動画を見ている。これは起きている時間の30%ほどだ。そして、この根底にあるパターンは私たちが思うほど変化していない。
先述の研究では「1970年以降にテレビや動画配信の技術が急増したことでより複雑な視聴パターンが生まれたが、これまでの変化は進化的なもので革命的なものではなかった」と述べている。著者らは、人々がいつどこで、どのように、そしてなぜテレビを見るのかはほとんど変わっておらず、新たな視聴パターンは主に古いものに取って代わるのではなく追加されただけだと述べている。
嫌な上司や請求書、別れを忘れさせてくれるテレビ
この調査の特に興味深い点は、テレビを視聴することが(少なくとも視聴している間は)心配事から逃れる上でこれほど効果的な理由だ。著者らは、画面の動く絵を追うことは自動的に多大な認知能力を使っており、刺激に対してボタンを押すといった副次的な作業の反応時間の遅さにそれが反映されている、と述べている。
つまり、テレビを見ることで文字通り、他のことから心が離れるのだ。そうすることで、ひどい上司やまだ支払いが済んでいない請求書、個人的な問題など考えたくないことについて考えるのをやめることができる。
若者はネット上を含め多くの方法でテレビを見ているが、ミレニアル世代の50%以上はいまだに従来型のテレビを使っている。また、テレビの全視聴時間の増加を主にけん引しているのは高齢者ではない。テレビを視聴する時間は年齢が上がるほど実際に増加するが、今回の研究では、長期的な視聴時間の増加において人口構造の変化が原因となっている割合は非常に少ないと主張している。
研究者らはまた、テレビとラジオの間に興味深い違いを見出している。ラジオを聞くことの大半は副次的な活動で、どこでいつ、どのように聞くかはテレビの視聴とは非常に異なるものだ。ラジオには視覚処理が関わらないため、テレビを見るよりも精神的な負担が少なくて済み、主要なタスクの反応時間に大きな影響を持たないようだ。
全文はソース元で
1/2(木) 19:00配信
フォーブス
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200102-00031587-forbes-bus_all