統一まで1000年
【ソウル=恩地洋介】北朝鮮の公式メディアが2019年に報じた金正恩(キム・ジョンウン)委員長の動静のうち、軍関連が18年比で大幅に増えたことがラヂオプレスの集計で判明した。北朝鮮メディアが12月26日までに報じた金正恩氏の動静109件のうち軍関連は27.5%の30件で、18年の6%(8件)から急増した。米朝協議が行き詰まり、弾道ミサイル開発を重視する姿勢に転じたことを映している。
18年は金正恩氏が実質的に最高指導者としての活動を始めた12年以降で軍関連の割合が最も小さかった。核開発を優先する方針から経済発展をめざす路線への変更を打ち出し、米国や韓国との積極外交を展開したためだ。
一転して内向き姿勢を強めたのは、2月末にハノイで開いた2回目の米朝首脳会談が物別れに終わってから。5月には新型の短距離弾道ミサイルを1年5カ月ぶりに発射。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)や大型ロケット砲など、11月末までに13回にわたり日本海に向けてミサイルを撃った。
金正恩氏の動静の多くは新兵器の開発に絡む。ミサイル発射に立ち会い、新技術の開発や追加実験を指示した。7月下旬にはSLBMを3発搭載できるとみられる新型潜水艦も視察した。
軍以外の動静で目立ったのは、肝煎りの観光地区建設現場などの視察だ。東部・元山の巨大リゾートや、平安南道にある温泉などに足を運んだ。南北経済協力の象徴だった金剛山では、韓国が建設した老朽化施設の撤去まで指示した。観光は国連安全保障理事会が決議した制裁の対象外で、外貨獲得の切り札として中国人観光客らを当て込んでいる。
10月と12月には中国との境界に位置し「革命の聖地」と位置づける白頭山を訪れた。「自力更生」や「不屈の革命精神」を説き、メディアは白馬にまたがる金正恩氏の姿を報じた。故金日成主席から続く統治の正統性を強調する狙いとみられる。制裁が長引き、指導部が求心力低下を懸念しているとの見方もある。
対外関係は動静全体の29.4%にあたる32件で、18年の48.1%(64件)から割合、件数ともに減った。内訳は中国の11件、ロシアの9件に続き、米国とベトナムがそれぞれ6件だった。
今回集計した動静には朝鮮労働党が12月28日から連日開催している中央委員会総会は含まれていない。
2019/12/31 14:32 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54000520R31C19A2FF8000/