TwitterやInstagramなどのSNSで広く使われているハッシュタグの中には、「#MeToo」「#FreeHongKong」など、政治的な意味合いを持つものも広く流行しています。ウェブ上のメディアや政治活動家は自身のSNS投稿に政治的なハッシュタグを付け、政治的な話題を提起したり自らの主張を訴えたりしていますが、「政治的なハッシュタグ付きの投稿は人々から『重要でない』と見なされやすく、信頼性に疑念が持たれやすい」との研究結果が発表されました。
カリフォルニア大学の大学院生であるEugenia Ha Rim Rho氏の研究チームは、ハッシュタグ付きの投稿が人々に与える影響について調査するため、1979人の被験者を対象としたオンライン実験を行いました。
研究チームは、ニューヨーク・タイムズやナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)といった主要なニュースソースのFacebook投稿と、SNS上で広く使われている「#MeToo」および「#BlackLivesMatter」という政治的ハッシュタグを組み合わせて実験を実施。被験者に対して「政治的ハッシュタグを付けた投稿」と「政治的ハッシュタグのない投稿」をランダムで見せて、記事に対するコメントをしてもらった上で、さらにいくつかのアンケートに回答してもらいました。
以下の画像の左が「政治的ハッシュタグのない投稿」であり、右が「政治的ハッシュタグのある画像」です。両者の最も大きな違いはハッシュタグの有無であり、ニュースソースやニュースの内容などはほぼ同じです
研究チームが被験者の回答を分析した結果、「政治的ハッシュタグは被験者を引きつける上で得策ではない」ことが発見されました。投稿に政治的ハッシュタグが含まれていた場合、被験者は投稿が示すトピックについて「社会的な重要性が低い」と判断しやすく、関連する問題についてより深く知ろうとする意欲も低かったとのこと。
また、一部の被験者においては、政治的ハッシュタグの含まれた投稿は「政治的に偏った内容だ」と見なされやすい傾向も見られました。こうした政治的ハッシュタグに関するネガティブな反応は、リベラルか保守的かといった政治的態度に関係なく見られたとRho氏は述べています。
Rho氏が特に興味深いと指摘しているのが、保守的でもリベラルでもなく、政治的に中道な人々からの反応です。政治的に中道な人々は、政治的ハッシュタグ付きの投稿を「政治的に偏っている」と見なす傾向が特に強く、投稿内容の信頼性に疑念を抱きやすかったとのこと。また、投稿内容そのものよりも、「ハッシュタグそのものの政治的意味合い」を強く重視するコメントも多く寄せられたそうです。
たとえば、政治的ハッシュタグ付きの投稿を見せられた中道の人の多くは、「#MeTooトピックは世間を騒がせる『カーダシアン一家』のようなものになりつつあります。あなたは#MeToo運動と関連のないニュースを見ることができません。確かにこれは重要な問題ですが、何度も繰り返し目にするとうんざりします」など、そもそも投稿されたニュースと関連のないコメントを寄せやすい傾向が見られました。
対照的に、政治的ハッシュタグのない投稿を見せられた中道の人の多くは、「ソーシャルメディアを介して被害者に声を挙げるプラットフォームを提供することは、自身の公にしづらい不快な経験を共有する最適な方法です。一部の人々はウソつきのレッテルを貼られて嫌がらせを受けるのを恐れています」など、投稿の内容に則したコメントを寄せました。このように、政治的なハッシュタグを添付しない投稿の方が、結果として核心に近い議論を引き出しやすい傾向が見られたそうです。
また、政治的なハッシュタグ付きの投稿は、被験者から感情的なコメントを引き出しやすかったとRho氏は指摘しています。被験者がハッシュタグ付きで投稿されたトピックに賛成していた場合でも、そのコメントには過激な言葉が使われやすかったとのこと。
Rho氏は「社会的な問題をキャッチーなハッシュタグでブランディング化することが、人々のハッシュタグ付き投稿に対する関心を弱め、主要なニュースソースのコンテンツにさえ党派的、あるいは虚偽的という印象を与えてしまいます」と述べ、政治的ハッシュタグの危うさを指摘。オンラインで健全な議論を維持したい場合には、政治的ハッシュタグの使用が有害となる可能性があると述べました
2019年12月28日 23時00分 gigazine
https://gigazine.net/news/20191228-political-hashtags-negative-reactions/