<無能で腐敗したトランプに再選の可能性が高まっているのには、2つの理由がある。そして12月、米民主党候補として世論調査でバイデンを上回る支持率を得た人物がいた――。本誌年末合併号「ISSUES 2020」特集より>
弾劾訴追を受けたアメリカ史上3人目の大統領になったというのに、ドナルド・トランプの再選の可能性が急上昇している。トランプが相手だと、理屈も政治力学も通じない。いまブックメーカーは、トランプが2期を務め上げる連続で4人目の大統領となる確率を50%近いと見積もっている。
普通ならば考えにくい話だ。トランプは大きな過ちを犯している。ただ無能というだけではなく、歴代大統領には並ぶ者のいない私利私欲だけの腐敗した人物であることも露呈した。それでも今日選挙が行われたら、トランプはおそらく勝つだろう。
トランプ再選の可能性が高いとみる根拠は、2つ挙げられる。第1にアメリカ経済が好調であることだ。株式市場は上昇を続け、失業率は低下を続け、消費は増え続けている。高くあるべき指標は高く、低くあるべき指標は低い。
景気拡大期に行われた直近の12回の大統領選では、現職大統領が常に2期目を目指し、常に勝利を収めている。経済がこのまま好調を続ければ、民主党がトランプを退けることは極めて難しい。
トランプ再選の可能性を支持する第2の根拠は、民主党がトランプに優る選択肢を提示できていないことだ。
いま民主党の大統領候補指名争いの先頭集団には、4人の有力候補がいる。ジョー・バイデン前副大統領は全米の支持率調査で首位を維持しているが、77歳と高齢であることの深刻な弊害を露呈している。選挙活動で訪れている州の名を頻繁に間違えたり、討論の最中にとりとめのない発言をしたり......という具合だ。
最近、アイオワ州での集会でバイデンの危うさを示す出来事が起きた。息子がウクライナで高給の仕事に就くためにバイデンは何をしたのかと質問した出席者を、バイデンはつい「デブ」と呼んでしまい、腕立て伏せで勝負しようと持ち掛けた。
アメリカ人は前任者とは反対のタイプを大統領に選びがちだ。このところバイデンは、トランプに似てきている。
トランプと真逆の候補を挙げると、予備選が行われる最初の2州で支持率首位のピート・ブーティジェッジがいる。年齢は37歳とトランプの半分で、7カ国語を話す現代で最も優秀な候補といわれるインディアナ州サウスベンド市長だが、彼もつまずき始めた。
民主党の特にリベラル派が、ブーティジェッジの弱点に切り込み始めているのだ。アフリカ系の有権者に人気がなく、20代のときに大手経営コンサルティング会社に勤務し、裕福な投資家たちから献金を受けているといったことがやり玉に挙げられている。
読めない要素が多過ぎる
全米の世論調査で2位のバーニー・サンダースは、民主党員ですらない。いま78歳の彼は心臓発作を起こしたこともあり、当選すれば史上最高齢の大統領になる。民主社会主義者を自称するが、この言い方は本選でトランプと対決したときに浮動票を遠ざける。つい2カ月前には最有力候補だったエリザベス・ウォーレン上院議員も、最近になって支持率が急落している。
民主党の有力候補があまりにふがいないので、出馬を否定していた前ニューヨーク市長で大富豪のマイケル・ブルームバーグが先頃名乗りを上げた。前マサチューセッツ州知事のデバル・パトリックも参戦したが、あまり人気はない。この2人の土壇場での出馬は、トランプ再選を何としても阻みたい「ネバー・トランプ派」が抱える緊張感を明確に表している。
このような状況だから、今後何が起きても不思議はない。
著名なラジオ司会者のハワード・スターンは、以前からヒラリー・クリントンが偉大な大統領になると主張してきた。スターンは2008年の予備選で、バラク・オバマではなくヒラリーを支持。2019年5月に発売した新著のメディア発表会では、ヒラリーが選挙運動中に自分のラジオ番組に出演していればトランプに勝てたと強く唱えた。
12/27(金) 11:52配信 ニューズウィーク 全文はソース元で
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191227-00010000-newsweek-int&p=1