農業者を目指している福井県立大学経済学部3年の原田健太郎さん(21)=福井県越前市生まれ=が12月12日、同大学永平寺キャンパス(永平寺町)の広場に、おにぎり屋台「安食食堂(あじきしょくどう)」をオープンした。今春から休学し起業の準備を進めていたもので、屋台はマイカーを改造した。自分たちが育てたコシヒカリのおにぎりを週3日販売し、学生の食生活をサポートしながら県産米のおいしさを発信していく。
出生後に移った静岡県藤枝市で育ち、大学は生まれ故郷の福井を選んだ。農家への憧れは小学4年からで、県立大1年の時から福井市内の農家を手伝い、コメ作りの基礎を学んだ。大学では経済学を選んでおり「将来はフィールドワークと大学での学びを掛け合わせ、農業の発展に貢献したい」と目標を話す。
キャンパスには学食や売店があるが、学生ですぐにいっぱいになってしまうという。原田さんはコンビニや近くの飲食店に行くことが多く、講義に間に合わなくなる時もあった。昨年11月に「安くて早くておいしいものが大学の敷地内にあれば」と考え、開店を決意。オープンの準備に集中するため今年4月から休学した。貯めていたお金を切り崩したり知人からの融資を受けたりして開業資金約100万円を確保し、自分の軽乗用車を改造し調理場や手洗い場などの設備を取り付けた。12月6日には、飲食店として保健所の営業許可が下りた。
メニューはシャケやツナマヨなどのおにぎり5種類のほか、だし茶漬けと、かつおだしを注いだ「ぼっかけ」。原田さんと農家が育てたコシヒカリや県産の油揚げ、かまぼこなどを使用している。2品以上の購入者は割引するなど価格設定も工夫している。
開店初日、赤いのれんを屋台に掛けると、同じ学部の学生や職員たちが続々と集まってきた。同大学2年のアルバイト2人が注文を受けると、原田さんはその場で一つ一つおにぎりを作り、学生らに手渡した。塩おにぎりを購入した経済学部3年の女子学生(21)は「大学生が経営していると思わなかった。すごくおいしい」と話した。
原田さんは「想像以上にお客さんが訪れたし、自分が作ったものに列をつくってくれたのは初めてでうれしい。でも十分に応えられず悔しさもあった」と複雑な表情。今後は1日240食の販売を目標にするとし、次の営業日に向け「回転スピードを上げていかないと」と意気込んだ。今後5年間はキャンパス内での販売を続ける考えで、いずれは学外に進出したいという。
2019年12月16日 午後5時10分 福井新聞
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/994032