https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191214-00010000-nknatiogeo-sctch
■存在自体が長く議論の的だった、香りをつける「獣脂説」は誤り
古代エジプト美術には、頭に円すい形の「何か」を載せた人々が登場する。
パピルスの巻物やひつぎに描かれた王族の晩さん会や神聖な儀式には、頭に円すいを載せた男女が集まっている。
特定の神々と結び付くとされた、出産の風景を描いた作品に描かれることもある。
古代エジプトでは1000年以上にわたり、この円すいが広く描かれ続けたが、実在したかどうかは不明で、その意味も解明されていなかった。
この謎めいた物体が発掘されたことはなく、一部の学者は単なる象徴にすぎないと考えるようになった。
キリスト教美術の聖人や天使の図像に描かれた光背のようなものだ。
12月10日付けで学術誌「Antiquity」で発表された最新の論文によれば、ある国際的な考古学チームがついにこの円すいを発見した。
円すいが発掘されたのは、古代エジプトの都市アマルナの共同墓地。ツタンカーメンの父とされるアクエンアテンが建てた寺院のある場所だ。
アマルナは紀元前14世紀に急いで建設され、わずか15年ほどで放棄された。当時の人口は約3万人。
豪華な墓地に埋葬された上流階級層は10%程度で、残りの一般市民は質素な墓地に埋葬された。
一般市民の墓地で価値あるものが見つかることは少ないが、2009年、アマルナ・プロジェクトのメンバーたちが謎の円すいの遺物を発見した。
アマルナ・プロジェクトは英ケンブリッジ大学が主導するプロジェクトで、ナショナル ジオグラフィック協会も資金援助を行っている。
すでに発掘調査から10年たっているが、オーストラリア、モナシュ大学の考古学者アナ・スティーブンス氏は、円すいを発見した日のことをはっきり覚えている。
そのとき、「これはたぶん円すいよ!」とプロジェクトメンバーのメアリー・シェパーソン氏が叫んだ。スティーブンス氏が駆け寄ると、女性の頭蓋骨の上にそれがあった。
スティーブンス氏はアマルナ・プロジェクトのアシスタントディレクターで、現在、共同墓地の調査の指揮を執っている。
「私たちがそれまでほかの墓地で見てきたものとは全く違いました」とスティーブンス氏は振り返る。
しかし、それは古代エジプト美術でよく目にする奇妙な円すいにそっくりだった。その後、性別不明の大人の墓地からも、別の円すいが発見された。
■脂の塊ではなかった
存在を疑う学者がいる一方で、円すいには広く支持されている仮説が1つ存在する。
頭の円すいは香り付けした獣の脂の塊で、体温によって少しずつ溶け、良い香りを放つヘアジェルのような役割を果たしていたという説だ。
スティーブンス氏らが調査を完了するまでに10年近くかかったのは、それを検証する必要があったからだった。
その結果、アマルナで発掘された遺物は、円すいは古代の整髪料だったという説を否定しているようだ。
その構造は塊ではなく中空で、黒褐色の有機物に覆われていた。有機物は織物だろうと研究チームは考えている。
2つの円すいには、ワックスの化学的な痕跡も残されていた。
知られている限り、古代エジプトで唯一使われていた生物由来のワックスは蜜ろうだけであり、研究チームは蜜ろうと結論づけている。
さらに、最も保存状態の良い骨格の毛髪を調べたところ、ワックスの痕跡は見当たらなかった。
古代エジプト美術で円すいと出産が関連づけられていること、少なくとも1つの遺体が大人の女性だったことから、頭上の円すいは
多産と何らかの関係があったのではないかと、研究チームは推測している。
ただし、発見されたのが一般市民の墓地だったこともあり、その背景にある意味を解釈するのは難しい。
オーストラリア、シドニー大学の考古学者ニコラ・ハリントン氏によれば、古代エジプトの図像では、頭に円すいを載せている人々の大部分が上流階級だが、
召使いに見える人物もいるという。
ほかの遺跡の墓地に比べると、アマルナの墓地には図像が少ないものの、頭に円すいを載せ、埋葬の準備や捧げ物をしている人物が描かれているものもある。
「基本的に、(円すいは)神前で身に着けるものなのでしょう」
※続きはソースで
■存在自体が長く議論の的だった、香りをつける「獣脂説」は誤り
古代エジプト美術には、頭に円すい形の「何か」を載せた人々が登場する。
パピルスの巻物やひつぎに描かれた王族の晩さん会や神聖な儀式には、頭に円すいを載せた男女が集まっている。
特定の神々と結び付くとされた、出産の風景を描いた作品に描かれることもある。
古代エジプトでは1000年以上にわたり、この円すいが広く描かれ続けたが、実在したかどうかは不明で、その意味も解明されていなかった。
この謎めいた物体が発掘されたことはなく、一部の学者は単なる象徴にすぎないと考えるようになった。
キリスト教美術の聖人や天使の図像に描かれた光背のようなものだ。
12月10日付けで学術誌「Antiquity」で発表された最新の論文によれば、ある国際的な考古学チームがついにこの円すいを発見した。
円すいが発掘されたのは、古代エジプトの都市アマルナの共同墓地。ツタンカーメンの父とされるアクエンアテンが建てた寺院のある場所だ。
アマルナは紀元前14世紀に急いで建設され、わずか15年ほどで放棄された。当時の人口は約3万人。
豪華な墓地に埋葬された上流階級層は10%程度で、残りの一般市民は質素な墓地に埋葬された。
一般市民の墓地で価値あるものが見つかることは少ないが、2009年、アマルナ・プロジェクトのメンバーたちが謎の円すいの遺物を発見した。
アマルナ・プロジェクトは英ケンブリッジ大学が主導するプロジェクトで、ナショナル ジオグラフィック協会も資金援助を行っている。
すでに発掘調査から10年たっているが、オーストラリア、モナシュ大学の考古学者アナ・スティーブンス氏は、円すいを発見した日のことをはっきり覚えている。
そのとき、「これはたぶん円すいよ!」とプロジェクトメンバーのメアリー・シェパーソン氏が叫んだ。スティーブンス氏が駆け寄ると、女性の頭蓋骨の上にそれがあった。
スティーブンス氏はアマルナ・プロジェクトのアシスタントディレクターで、現在、共同墓地の調査の指揮を執っている。
「私たちがそれまでほかの墓地で見てきたものとは全く違いました」とスティーブンス氏は振り返る。
しかし、それは古代エジプト美術でよく目にする奇妙な円すいにそっくりだった。その後、性別不明の大人の墓地からも、別の円すいが発見された。
■脂の塊ではなかった
存在を疑う学者がいる一方で、円すいには広く支持されている仮説が1つ存在する。
頭の円すいは香り付けした獣の脂の塊で、体温によって少しずつ溶け、良い香りを放つヘアジェルのような役割を果たしていたという説だ。
スティーブンス氏らが調査を完了するまでに10年近くかかったのは、それを検証する必要があったからだった。
その結果、アマルナで発掘された遺物は、円すいは古代の整髪料だったという説を否定しているようだ。
その構造は塊ではなく中空で、黒褐色の有機物に覆われていた。有機物は織物だろうと研究チームは考えている。
2つの円すいには、ワックスの化学的な痕跡も残されていた。
知られている限り、古代エジプトで唯一使われていた生物由来のワックスは蜜ろうだけであり、研究チームは蜜ろうと結論づけている。
さらに、最も保存状態の良い骨格の毛髪を調べたところ、ワックスの痕跡は見当たらなかった。
古代エジプト美術で円すいと出産が関連づけられていること、少なくとも1つの遺体が大人の女性だったことから、頭上の円すいは
多産と何らかの関係があったのではないかと、研究チームは推測している。
ただし、発見されたのが一般市民の墓地だったこともあり、その背景にある意味を解釈するのは難しい。
オーストラリア、シドニー大学の考古学者ニコラ・ハリントン氏によれば、古代エジプトの図像では、頭に円すいを載せている人々の大部分が上流階級だが、
召使いに見える人物もいるという。
ほかの遺跡の墓地に比べると、アマルナの墓地には図像が少ないものの、頭に円すいを載せ、埋葬の準備や捧げ物をしている人物が描かれているものもある。
「基本的に、(円すいは)神前で身に着けるものなのでしょう」
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