台風19号で甚大な被害を受けた宮城県丸森町に伝わる東北最古の「猫神さま」の石碑が、現地に残っていた。土砂にのまれたと思われていたが、研究者が現存を確認した。猫神さまは養蚕の守り神とされ、町内には日本一多くの石碑と石像があり、町おこしに一役買っている。その象徴的な碑が失われずに済み、関係者はほっとしている。
東北最古の石碑が伝わるのは、土砂災害が発生した五福谷川沿いの中島地区・中島天神社境内。江戸時代後期の文化7(1810)年の年号と「猫神」の文字が刻まれている。丸まった猫の姿を彫った安政5(1858)年の石像もある。
氏子によると、天神社の拝殿は約1.8メートル床上浸水し、泥が入った。大量の流木は鳥居で食い止められ、直撃は避けられたが、境内にあった小さなお堂は約300メートル流された。
猫神さまを調査している同県村田町歴史みらい館専門員の石黒伸一朗さん(61)が台風襲来直後に2度現地を訪れたが、土砂で手掛かりがつかめなかった。10月24日に3度目に訪れたとき、泥に埋まった石碑の上部がわずかに出ているのを見つけた。石像は泥の中にあおむけに倒れていた。
阿武隈川流域は全国有数の養蚕地帯で、町も県内最大の養蚕地だった。蚕をかじるネズミを駆除する猫が大切にされ、石碑と石像は計81基を数える。近年、町の観光名所の斎理屋敷で企画展が開かれたり、菓子店が猫の足跡模様の付いた生どら焼きを商品化したりして人気を集めている。
石黒さんは「学術的に価値の高い民俗資料が失われなくて良かった」と話す。町文化財友の会副会長の鈴木悦郎さん(72)も「祖先の暮らし、郷土の産業を伝える大切な資源。文化財の保存活用にいっそう目を向けたい」と喜ぶ。
神社は12月1日、氏子とボランティアの手で泥がかき出された。氏子総代の宍戸克美さん(64)は「石碑は丸森らしい観光資源として、見物客が訪れていた。地域は犠牲者も出て大きな被害を受けたが、マイナスイメージを払拭(ふっしょく)して発信したい」と話した。
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河北新報オンラインニュース
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