■全部で82個と木星の79個を上回る、17個は「逆行」
土星に20個の新たな衛星が見つかったと、天文学者が発表した。これで土星の衛星は全部で82個となり、太陽系でもっとも多く衛星を持つ惑星となった。
木星に12個の衛星が見つかり、合計79個となったのは2018年のこと。今回の発見で、土星にはそれを上回る数の衛星があることがわかった。
新たに見つかった小さな衛星たちは、初期の太陽系で起こった数多くの衝突について理解する助けになるかもしれない。今後の木星や土星の探査において、接近観測するターゲットの天体になる可能性もある。
「これらの衛星がおもしろいのは、現在進行中の探査ミッションがあることです」と、土星や木星の新たな衛星発見に携わっている米カーネギー研究所の天文学者スコット・シェパード氏は話す。
現時点でも木星や土星の衛星をめざす探査計画はいくつもある。木星の衛星エウロパを探査するNASAのエウロパ・クリッパー、土星の衛星タイタンをめざすNASAのドラゴンフライ、そしてガニメデなど木星の氷衛星をめざす欧州宇宙機関(ESA)のJUICEなどだ。
「ずいぶん多くの衛星があるので、探査機が木星や土星に近づけば、ほぼ確実にいずれかの衛星の近くを通ることになるでしょう」と、シェパード氏は語る。
■17個の衛星は「逆行」していた
観測には、米国ハワイにあるすばる望遠鏡が使われた。今回発見された土星の衛星は、いずれも直径5キロメートルほどの天体で、検出限界ぎりぎりの大きさだという。
発見には10年以上を要した。シェパード氏らは未発見の衛星を探すため、2004年から2007年にかけて、すばる望遠鏡を使って土星の周辺を綿密に観測した。衛星らしきいくつかの光の点は見つかったものの、それらが実際に土星を周回していることを証明するのは困難だった。
「いつも心の奥にそのことがありました」とシェパード氏は言う。ところが、その後の新たな技術によって、複数年にわたる望遠鏡画像の関連性をはるかに簡単に分析できるようになった。シェパード氏がデータを分析し直したところ、土星を周回する20個の光の点が浮かび上がった。
新たな衛星のうち、17個は土星の自転方向とは逆向きに周回する「逆行衛星」で、3年以上をかけて土星の周りを一周する。残る3個の衛星は、土星の自転方向と同じ向きに周回する「順行衛星」だ。そのうち2個は約2年で、最後の1個は3年以上をかけて土星を一周する。
土星の衛星はその性質によって、いくつかの「群」に分類されているが、今回発見された衛星もその中に分類されることになる。軌道の向き、土星からの距離、土星に対する軌道の傾きから考えると、今回発見された逆行衛星は「北欧群」に、順行衛星のうち土星に近い2個は「イヌイット群」に、一番遠くにあるもう1個の順行衛星は「ガリア群」に分類される。
シェパード氏らは、それぞれの衛星群は太陽系が形成されたばかりのころに、土星の引力にとらえられた別々の天体だったのではないかと考えている。その後、衝突が繰り返される中でバラバラになり、現在のような姿になったという説だ。
「これらの衛星は、はるか昔の太陽系がとても無秩序な場所だったことを示しています。あらゆるものが衝突を繰り返していました。衛星はその過程の名残なのです」
20個の衛星には、まだ正式な名称は与えられていない。名称は現在公募中で、締め切りは12月6日となっている。
ナショナルジオグラフィック日本版サイト
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/100900581/
土星に20個の新たな衛星が見つかったと、天文学者が発表した。これで土星の衛星は全部で82個となり、太陽系でもっとも多く衛星を持つ惑星となった。
木星に12個の衛星が見つかり、合計79個となったのは2018年のこと。今回の発見で、土星にはそれを上回る数の衛星があることがわかった。
新たに見つかった小さな衛星たちは、初期の太陽系で起こった数多くの衝突について理解する助けになるかもしれない。今後の木星や土星の探査において、接近観測するターゲットの天体になる可能性もある。
「これらの衛星がおもしろいのは、現在進行中の探査ミッションがあることです」と、土星や木星の新たな衛星発見に携わっている米カーネギー研究所の天文学者スコット・シェパード氏は話す。
現時点でも木星や土星の衛星をめざす探査計画はいくつもある。木星の衛星エウロパを探査するNASAのエウロパ・クリッパー、土星の衛星タイタンをめざすNASAのドラゴンフライ、そしてガニメデなど木星の氷衛星をめざす欧州宇宙機関(ESA)のJUICEなどだ。
「ずいぶん多くの衛星があるので、探査機が木星や土星に近づけば、ほぼ確実にいずれかの衛星の近くを通ることになるでしょう」と、シェパード氏は語る。
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■17個の衛星は「逆行」していた
観測には、米国ハワイにあるすばる望遠鏡が使われた。今回発見された土星の衛星は、いずれも直径5キロメートルほどの天体で、検出限界ぎりぎりの大きさだという。
発見には10年以上を要した。シェパード氏らは未発見の衛星を探すため、2004年から2007年にかけて、すばる望遠鏡を使って土星の周辺を綿密に観測した。衛星らしきいくつかの光の点は見つかったものの、それらが実際に土星を周回していることを証明するのは困難だった。
「いつも心の奥にそのことがありました」とシェパード氏は言う。ところが、その後の新たな技術によって、複数年にわたる望遠鏡画像の関連性をはるかに簡単に分析できるようになった。シェパード氏がデータを分析し直したところ、土星を周回する20個の光の点が浮かび上がった。
新たな衛星のうち、17個は土星の自転方向とは逆向きに周回する「逆行衛星」で、3年以上をかけて土星の周りを一周する。残る3個の衛星は、土星の自転方向と同じ向きに周回する「順行衛星」だ。そのうち2個は約2年で、最後の1個は3年以上をかけて土星を一周する。
土星の衛星はその性質によって、いくつかの「群」に分類されているが、今回発見された衛星もその中に分類されることになる。軌道の向き、土星からの距離、土星に対する軌道の傾きから考えると、今回発見された逆行衛星は「北欧群」に、順行衛星のうち土星に近い2個は「イヌイット群」に、一番遠くにあるもう1個の順行衛星は「ガリア群」に分類される。
シェパード氏らは、それぞれの衛星群は太陽系が形成されたばかりのころに、土星の引力にとらえられた別々の天体だったのではないかと考えている。その後、衝突が繰り返される中でバラバラになり、現在のような姿になったという説だ。
「これらの衛星は、はるか昔の太陽系がとても無秩序な場所だったことを示しています。あらゆるものが衝突を繰り返していました。衛星はその過程の名残なのです」
20個の衛星には、まだ正式な名称は与えられていない。名称は現在公募中で、締め切りは12月6日となっている。
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ナショナルジオグラフィック日本版サイト
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/100900581/