この試算は、防災科学技術研究所と、災害時の拠点病院に指定されている日本医科大学の研究グループがまとめました。
試算では、東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3の地震が起きたと仮定し、東京都内の医療体制などをもとにシミュレーションしています。
それによりますと、けがの症状が比較的重い状態で、都内の医療機関に搬送されたり、訪れたりする被災者は、2万1000人余りにのぼります。
しかし、医療スタッフの不足などによって、およそ3人に1人にあたる6500人余りが、地震発生から8日間の間に、治療を受けられないまま死亡する可能性があるということです。
地域別では、全体の85%が東京23区の東部と東北部の医療機関に集中しています。
こうした医療機関では、地震発生から数時間後には医療スタッフが足りなくなり、その状況は5日間以上続くということです。
一方、搬送後に治療を受けられた被災者の96%は助かる可能性が高い、という結果になりました。
東京都は、家屋の倒壊や火災によって、最悪の場合、9700人が死亡するという試算を公表していますが、医療機関への搬送後に亡くなる被災者の試算が明らかになったのは初めてで、研究グループは、首都直下地震によって死亡する人は、これまでの想定を大幅に上回る可能性があると指摘しています。
試算を行った日本医科大学医学部の布施明教授は「医療スタッフの人手が圧倒的に不足することから、深刻な事態が予想される。“救えるはずの命”を救うため、発生直後に大量に人手を投入できるよう、体制を整えるべきだ」と指摘しています。
■試算の内容は
今回の試算では、想定される被害状況に加えて地域別の医療機関の数や規模、負傷者のけがの程度、それに地震発生後の時間の経過などを考慮してシミュレーションしています。
それによりますと、集中治療や入院などが必要になるとみられる重傷者で、東京都内の医療機関に搬送されたり訪れたりする被災者は2万1520人としています。
このうち治療の優先順位を決める「トリアージ」によって、最優先とされる「赤色」の重傷者の割合は、全体の2割、2番目に優先される「黄色」の重傷者の割合が8割となっています。
これらの重傷者が負傷した地点から最も近い医療機関に搬送などされると仮定したうえで、災害時の救護活動に関するガイドラインをもとに医療機関の対応をシミュレーションした結果、治療を受けられたのは全体の7割に当たる1万4986人にとどまりました。
一方、残りの3割に当たる6534人は治療を受けられない状態が続き、災害の発生から8日間のうちに死亡する可能性があると試算されました。
この条件によるシミュレーションで、死亡する人が最も多いと試算されたのは墨田区、江東区、江戸川区の東京東部で43%。荒川区、足立区、葛飾区の東北部が42%となりました。
また、豊島区などからなる西北部と品川区などからなる南部が、それぞれ4%台となり、現状のまま対策が取られなければ、東部と東北部の医療機関に犠牲者が集中する試算結果となりました。
■救急医療の現場は
今回の試算で地震の発生直後から多くの重傷者が訪れることで、医療スタッフが圧倒的に不足するとされたのが、東京23区の東部と東北部です。
このうち、東北部の葛飾区にある平成立石病院は、災害時の拠点病院に指定され、日常的に受け入れている救急患者は平均で1日当たり25人ほど、多い日では30人ほどだということです。
しかし、東京湾北部を震源とする首都直下地震を想定した今回の試算では、この地域で搬送されるなど拠点病院を訪れる重傷者は、最悪の場合で1つの医療機関当たり162人となっています。
以下ソース先で
2019年9月6日 18時43分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190906/k10012067211000.html
![【首都直下地震】負傷者の3人に1人にあたる6500人余りが、治療を受けられないまま死亡する可能性 研究グループ YouTube動画>1本 ->画像>4枚](https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190906/K10012067211_1909061850_1909061854_01_03.jpg)