https://www.sankeibiz.jp/macro/news/190823/mcb1908230500008-n1.htm
昨年、末期のがん患者らの痛み緩和を目的に、医療用大麻の利用拡大を認める法案が可決されたニュージーランド。
嗜好(しこう)品として大麻使用の合法化の是非を問う国民投票も来年予定されている。
世論調査では賛成が多数で、大麻産業の本格化も現実味を増している。
大麻の生産を、貧困にあえぐ先住民マオリの生活向上につなげようとする動きもある。
ニュージーランド北島の北東部ギズボーン地方。人口約750人の町ルアトリアは小高い山に囲まれ、農林業が主な産業だ。
2013年の国勢調査によると、住民所得の中央値は1万7100ニュージーランドドル(約116万5000円)で、国内有数の貧困地域。
失業率は全国平均の2倍以上の15.7%に上る。町に活気はなく、中心部の商店街も閑散としている。
政府から民間で初めて医療用大麻の生産免許を得たヒクランギグループは地域振興を掲げ、この町に100人以上の雇用を生み出そうとしている。
ニュージーランドのマオリ人口は15%ほどだが、ルアトリアでは90%以上を占めており、マオリが大麻生産に携わることで生計を助ける狙いだ。
ニュージーランドはマオリを差別してきた負の歴史を持つ。
1987年にマオリ語が英語とともに公用語となり、社会的地位は改善したが、今も白人と比べると失業率が高い。
ヒクランギグループ社長で、自身もマオリのパナパ・エハウ氏は
「森林伐採が進み、この土地の山は荒れ果ててしまった。大麻の栽培で農業を盛り上げ、人々を幸せにしたいと思った」と語る。
ある調査では、ニュージーランド人の推定12%が過去に大麻を違法に使用していた。
ルアトリア周辺には大麻の違法栽培をする農家があり、摘発されることもある。
薬物関連の犯罪で収監された受刑者の約40%がマオリとのデータもあり、マオリの間には「捜査当局は自分たちを狙い撃ちにしている」との不満が募る。
エハウ氏は「彼らは億万長者になろうと思って大麻を栽培していたわけではない。少しでも家計の足しにしようと思っただけだ」と説明。
違法栽培してきた農家とも契約し、合法的に栽培できる環境を整えたいと話している。