2019年8月16日20時3分
長崎原爆資料館(長崎市)に保管されている千羽鶴がこの夏、お香となった。陶磁器のまち、長崎県波佐見町の焼き窯で灰にして、香料と練り合わせて再生された。鎮魂や平和への願いが込められている。
お香をつくったのは、波佐見町の一般社団法人「金富良舎(こんぷらしゃ)」。代表を務める京都府在住の現代美術家、松尾栄太郎さん(42)が発案した。
波佐見町出身の松尾さんは芸術家として灰を大切にしてきた。灰は工芸品の染料や釉薬(ゆうやく)、肥料、洗剤に使われる。自身も紙を燃やした際の焦げ目を生かしたアートを得意とし、灰を絵の具に混ぜることもある。
原爆資料館にたくさん寄せられる折り鶴をどう保管するか、課題になっている――。そんな話を昨年、知人から聞いた。「灰は再生や生まれ変わりの象徴。千羽鶴に込められた思いを、新しい形に表現することでたすきのようにつないでいけないか」
地域おこしに仲間と立ち上げていた金富良舎のメンバーに相談し、「お香」の商品化が決まった。鎮魂の願いも込めた。原爆資料館に話を持ちかけた。
資料館によると、年間約700キロの折り鶴が寄せられ、一定期間展示して地下2階の倉庫に保管した後、再生紙にリサイクルなどしてきた。「長崎へ届いた鶴を地元で再生させることなので、お願いした」と担当者は話す。
千羽鶴を譲り受けた金富良舎は、特注の焼き窯で灰にした。灰や香料の配合が難しく、試作を重ねて今夏、せっけんのような香りの「折鶴(おりづる)香」を完成させた。
約3千セットをつくり、1セット税込み1350円で通信販売を開始。あわせて波佐見焼でお香立てもつくり、その釉薬に千羽鶴の灰を使った。「法事で使いたい。祖母が被爆した」といった声が寄せられ、松尾さんは「長崎から一筋の香りに平和への願いを込めていきたい」と話す。
問い合わせは金富良
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