アホウドリやカモメ、ペンギンなどの鳥類は、集団営巣する習性がある。鳥は親が抱卵することで外敵から卵を守っているが、これまでの研究で、恐竜は抱卵しなかったことが判明している。

■テリジノサウルス類の卵化石も
北大総合博物館の小林快次教授や筑波大学、兵庫県立人と自然の博物館らのチームは2011年夏、海外の研究者と協力して、モンゴル・ゴビ砂漠東部に位置する約8600〜7200万年前の白亜紀後期の地層「ジャブラント層」で調査を実施。2018年まで計5回の発掘調査を続けた結果、約300平方メートルの範囲で少なくとも15の巣の化石を発見した。

巣の中には、直径13センチの球状の卵の化石が3〜30個見つかっており、殻の特徴から二足歩行していた獣脚類「テリジノサウルス類」が産んだものだと推測されている。
■営巣成功率が高い
テリジノサウルス類は、馬のような頭に長い首をもち、前脚に鎌のような鋭い爪が備わった体長2〜10メートルの恐竜で、これまでにも中国やモンゴルで卵や巣の化石が見つかっている。
今回見つかった卵の殻には、呼吸ができるように微細な穴がたくさんあいていることから、ワニのように巣の中に埋めて地面の熱で温めていたものと考えられる。
卵の化石はすべて同じ地層から見つかっており、内部の堆積物の分析から、同じ繁殖シーズンに産卵され、その後、洪水で埋もれた可能性が高い。

■恐竜から鳥へ進化の謎
また、15個の巣のうち、9個の巣でヒナが孵化した痕跡が見つかっていることから、この集団の営巣成功率は60%と高かったことがうかがえるという。
研究グループは、「鳥類は、獣脚類恐竜の一派から進化したと考えられている。抱卵しなかった恐竜が、どのような進化のプロセスを経て、鳥類の抱卵行動を獲得したのか、解明に結びつけたい」と期待を寄せている。
なおこの研究成果は、地質学誌『Geology』に今月5日付で掲載された。

ハザードラボ
https://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/3/0/30195.html