ベルギーで発見されたネアンデルタール人の顎骨。この骨から抽出されたDNAの分析により、彼らがヨーロッパを横断してアジアに入った時期が明らかになった。
■遺伝的特徴が太古のヨーロッパで長く継続、シベリアへも進出の可能性
※省略
ネアンデルタール人の祖先は、少なくとも50万年前に現生人類の祖先と分岐してから、ヨーロッパ全域に広がり、西南アジアと中央アジアに進出した。2019年6月24日付け学術誌「Science Advances」に発表された論文によると、今から12万年前のヨーロッパに生きていた2人のネアンデルタール人の遺伝子は、ずっと後の時代のネアンデルタール人の遺伝子と驚くほどよく似ていたという。その上、一方の個体には珍しいDNAもあり、別の人類と交配していたことも示唆された。
論文の著者の一人、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所のカイ・プリューファー氏は今回の発見について、ネアンデルタール人の移動や他の種との関係を解き明かすヒントになると説明する。(後略)
■DNAの分析から驚きの事実が続々と
※省略
分析結果は驚くべきものだった。2人のヨーロッパ・ネアンデルタール人は、シベリアで発見された同時代のアルタイ・ネアンデルタール人よりも、数万年後にヨーロッパ全域をうろついていたネアンデルタール人に近かったのだ。さらにこの2人は、ハーフの少女のネアンデルタール人の母親と遺伝学的に非常に近かった。
12万年前の2人のヨーロッパ・ネアンデルタール人と9万年前のハーフのネアンデルタール人少女の母親との遺伝学的類似は、この2人が、先にデニソワ洞窟に住んでいた集団に取って代わった集団のメンバーだった可能性をほのめかしている。米コールドスプリングハーバー研究所サイモンズセンターの計算生物学者アダム・シーペル氏は、この2人がアルタイ・ネアンデルタール人と同じ時代に生きていたことから、集団の入れ替わりは12万年前には始まっていた可能性があると指摘する。
「2人は入れ替わった集団のルーツに近いところに位置付けられると思います」とシーペル氏。
■ミトコンドリアDNAの謎
分析が終わっているのはネアンデルタール人の物語のうちの数章にすぎないが、これからどう展開してゆくのかわからない発見もあった。マックス・プランク進化人類学研究所で今回の分析を行った論文著者ステファン・ペイレン氏は、ネアンデルタール人の核DNAは時代と場所を問わずよく似ているが、ホーレンシュタイン・シュターデル洞窟の大腿骨のミトコンドリアDNAは、これまでに調べられたほかのどのネアンデルタール人のミトコンドリアDNAにも似ていないと言う。
このミトコンドリアDNAの謎は、2017年に学術誌「ネイチャー」に発表された研究でも指摘されていた。今回の研究で、研究チームは2017年の研究の分析の正しさを裏づけ、数値解析を行って、遺伝的変異が偶然生じたものではないことを示した。とはいえ、なぜそのような変異が生じたかについてはまだ説明できていない。
可能性はいくつかある。ひとつは、彼らがはるかな昔にほかの集団と別れた、古いネアンデルタール人集団に起源をもつ可能性。もうひとつは、現生人類の祖先がネアンデルタール人の遺伝学的特徴に変化をもたらした可能性だ。長期にわたって存続したヨーロッパ・ネアンデルタール人のメンバーはとうに絶滅してしまったが、彼らは5万5000年前頃にアフリカを出た現生人類と交配し、アフリカ出身以外の現生人類のDNAに最大2%のネアンデルタール人DNAを残したことがわかっている。
おそらくその逆のことも起きていて、初期の現生人類は、自分のDNAをネアンデルタール人に伝えていたはずだ。その場合、現生人類はネアンデルタール人に少なくとも2種類のミトコンドリアDNAを伝えていたことになるとプリューファー氏は説明する。そのうちの1つはホーレンシュタイン・シュターデル洞窟の大腿骨のミトコンドリアDNA配列へと進化し、もう1つは、まだ見つかっていないその他のネアンデルタール人のミトコンドリアDNA配列になったのだ。
古代のDNAの研究を専門とする中国科学院の付巧妹(フ・シャオメイ)氏は、核DNAとミトコンドリアDNAの分析結果の不一致は意外だったが、本当は意外でもなんでもないのかもしれないと言う。なお、付氏は今回の研究に関与していない。
「デニソワ人でも同じことが起きているのですから、今後証拠が集まるにつれ、ヒト族の交雑の歴史の複雑さや、交雑が何度も起きていることが明らかになってくると思います」と付氏。(続きはソース)
6/28(金) 18:14配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190628-00010001-nknatiogeo-sctch
![【旧人】ネアンデルタール人、ヨーロッパ集団が繁栄していた ミトコンドリアDNAの謎、現生人類の祖先と交配? ->画像>14枚](https://amd.c.yimg.jp/amd/20190628-00010001-nknatiogeo-000-4-view.jpg)
■遺伝的特徴が太古のヨーロッパで長く継続、シベリアへも進出の可能性
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ネアンデルタール人の祖先は、少なくとも50万年前に現生人類の祖先と分岐してから、ヨーロッパ全域に広がり、西南アジアと中央アジアに進出した。2019年6月24日付け学術誌「Science Advances」に発表された論文によると、今から12万年前のヨーロッパに生きていた2人のネアンデルタール人の遺伝子は、ずっと後の時代のネアンデルタール人の遺伝子と驚くほどよく似ていたという。その上、一方の個体には珍しいDNAもあり、別の人類と交配していたことも示唆された。
論文の著者の一人、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所のカイ・プリューファー氏は今回の発見について、ネアンデルタール人の移動や他の種との関係を解き明かすヒントになると説明する。(後略)
■DNAの分析から驚きの事実が続々と
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分析結果は驚くべきものだった。2人のヨーロッパ・ネアンデルタール人は、シベリアで発見された同時代のアルタイ・ネアンデルタール人よりも、数万年後にヨーロッパ全域をうろついていたネアンデルタール人に近かったのだ。さらにこの2人は、ハーフの少女のネアンデルタール人の母親と遺伝学的に非常に近かった。
12万年前の2人のヨーロッパ・ネアンデルタール人と9万年前のハーフのネアンデルタール人少女の母親との遺伝学的類似は、この2人が、先にデニソワ洞窟に住んでいた集団に取って代わった集団のメンバーだった可能性をほのめかしている。米コールドスプリングハーバー研究所サイモンズセンターの計算生物学者アダム・シーペル氏は、この2人がアルタイ・ネアンデルタール人と同じ時代に生きていたことから、集団の入れ替わりは12万年前には始まっていた可能性があると指摘する。
「2人は入れ替わった集団のルーツに近いところに位置付けられると思います」とシーペル氏。
■ミトコンドリアDNAの謎
分析が終わっているのはネアンデルタール人の物語のうちの数章にすぎないが、これからどう展開してゆくのかわからない発見もあった。マックス・プランク進化人類学研究所で今回の分析を行った論文著者ステファン・ペイレン氏は、ネアンデルタール人の核DNAは時代と場所を問わずよく似ているが、ホーレンシュタイン・シュターデル洞窟の大腿骨のミトコンドリアDNAは、これまでに調べられたほかのどのネアンデルタール人のミトコンドリアDNAにも似ていないと言う。
このミトコンドリアDNAの謎は、2017年に学術誌「ネイチャー」に発表された研究でも指摘されていた。今回の研究で、研究チームは2017年の研究の分析の正しさを裏づけ、数値解析を行って、遺伝的変異が偶然生じたものではないことを示した。とはいえ、なぜそのような変異が生じたかについてはまだ説明できていない。
可能性はいくつかある。ひとつは、彼らがはるかな昔にほかの集団と別れた、古いネアンデルタール人集団に起源をもつ可能性。もうひとつは、現生人類の祖先がネアンデルタール人の遺伝学的特徴に変化をもたらした可能性だ。長期にわたって存続したヨーロッパ・ネアンデルタール人のメンバーはとうに絶滅してしまったが、彼らは5万5000年前頃にアフリカを出た現生人類と交配し、アフリカ出身以外の現生人類のDNAに最大2%のネアンデルタール人DNAを残したことがわかっている。
おそらくその逆のことも起きていて、初期の現生人類は、自分のDNAをネアンデルタール人に伝えていたはずだ。その場合、現生人類はネアンデルタール人に少なくとも2種類のミトコンドリアDNAを伝えていたことになるとプリューファー氏は説明する。そのうちの1つはホーレンシュタイン・シュターデル洞窟の大腿骨のミトコンドリアDNA配列へと進化し、もう1つは、まだ見つかっていないその他のネアンデルタール人のミトコンドリアDNA配列になったのだ。
古代のDNAの研究を専門とする中国科学院の付巧妹(フ・シャオメイ)氏は、核DNAとミトコンドリアDNAの分析結果の不一致は意外だったが、本当は意外でもなんでもないのかもしれないと言う。なお、付氏は今回の研究に関与していない。
「デニソワ人でも同じことが起きているのですから、今後証拠が集まるにつれ、ヒト族の交雑の歴史の複雑さや、交雑が何度も起きていることが明らかになってくると思います」と付氏。(続きはソース)
6/28(金) 18:14配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190628-00010001-nknatiogeo-sctch