「宗教の名の下のリンチはもういらない」と書かれたポスターを持って抗議する女性=インド東部コルカタで26日、ロイター
インドのジャルカンド州と西ベンガル州、バングラデシュ
インド東部ジャルカンド州で今月中旬、イスラム教徒の男性がヒンズー教徒の集団暴行を受けて死亡したとされる事件があり、波紋を広げている。事件後に拡散した動画に、命乞いをする男性が、ヒンズー教の神をたたえる言葉を唱えるよう強要される様子が映っていたためだ。インドでは多数派のヒンズー教徒が少数派のイスラム教徒らを暴行する事件が相次いでいるとされ、各地で事件への抗議デモが起こっている。
インド民放NDTVによると、事件は今月18日に発生。「バイクを盗んだ」と疑われたタブレズ・アンサリさん(24)が電柱に縛られるなどして7時間以上、暴行を受けた。アンサリさんは翌日警察に引き渡され、その3日後に病院搬送されてから間もなく死亡した。
警察はアンサリさんに暴行した複数の容疑者を拘束し、適切な措置を取らなかったとして警官2人も停職処分としたが、イスラム教徒らが反発。ロイター通信によると、同州に隣接する西ベンガル州コルカタのデモでは参加者が「宗教の名の下のリンチはもういらない」と書いたポスターを掲げて抗議した。
インドでは2014年にヒンズー至上主義のモディ政権が発足して以降、過激なヒンズー教徒によるイスラム教徒への攻撃が増えたとされる。米政府機関の米国際宗教自由委員会(USCIRF)によると、17年中にインドで起きた宗教間対立による衝突は822件で111人が死亡、2384人が負傷した。
また米国務省は今月21日に発表した各国の信教の自由に関する年次報告書の中で、インドについて「与党には、少数派への怒りをあおるような演説をする幹部もいる」と指摘。モディ首相は26日、今回の事件について「心が痛む」と初めてコメントし、厳罰を求めた。【ニューデリー松井聡】
毎日新聞 2019年6月28日 06時00分(最終更新 6月28日 12時52分)
https://mainichi.jp/articles/20190627/k00/00m/030/304000c?inb=ra