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10代の大麻汚染 「容易に手に入れられる」 通信内容を暗号化 入手先特定は困難
2019年6月8日 05:00
大麻汚染 10代に広がる薬物(上)
大麻取締法違反の疑いで高校生ら未成年10人が摘発された事件は、10代にも大麻が広がっている現実を突き付けた。なぜ高校生らは大麻に手を出すのか。乱用を防止するにはどうしたらいいか。県内の現状を追った。
「在庫切れのため10日(3日後)のご案内になります」。販売人を名乗る会員制交流サイト(SNS)アカウントに7日、記者が大麻の入手についてメッセージを送ると、数分以内に返事が返ってきた。
短文投稿サイト「ツイッター」で大麻を意味する隠語の「野菜」、手渡しを指す「手押し」など特定のキーワードを入れて検索すると、大麻販売をほのめかす投稿が出てくる。
販売人を名乗る人物のツイッターでは、通信内容が暗号化され秘匿性が高いアプリ「テレグラム」を使うよう誘導している。一般にはなじみが薄いが、県警関係者によると、薬物売買の多くは暗号化技術が使われた通信アプリが使われるという。高校生ら未成年10人が大麻取締法違反容疑で摘発された事件でも、SNSでのやりとりで大麻が広がっていった。
捜査関係者によると、大麻の捜査はSNSの記録や供述を基に進められる。だが、記録などをたどっても、SNSのユーザーアカウントから人物特定に至るのは容易ではないという。個人のアカウントを押さえるためには捜索令状が必要で、運営会社に直接令状を持ち込む必要がある。会社が海外にあれば時間もかかる。
また、仮にアカウントを差し押さえたとしても削除されたり、端末自体がすでに使われていなかったり、多くのケースで難航する。捜査関係者は「なじみあるツイッターなどのSNSでも個人の特定が難しい。ましてや秘匿性の高い通信アプリであればたどり着くのはほぼ不可能」と、サイバー空間の捜査の限界を語る。
SNSが普及した今、大麻をはじめ薬物は「容易に入手ができてしまう環境」(県警担当者)にある。そして捜査の手が及びにくいことを少年らが知り、大麻のまん延に拍車が掛かっている実態が浮かび上がる。
子どものネット問題に詳しい高宮城修さん(ネットいじめパトロール隊代表)は「子どもが触れる世界を大人は知らなすぎる。今回の事件を人ごとと思わず、どの子にも薬物に触れるきっかけがあると捉えてほしい」と教育関係者や保護者に呼び掛けた。