休暇を使って、今まで言ったことがない場所に行くと同時に、自分自身について今まで知らなかったことを発見したい? そんな人がまさに自分を見つける旅に出ることが、民泊サイト大手エアビーアンドビーとDNA検査キット「23アンドミー(23andMe)」との提携により可能になった。
人々はインスタグラムに感化されて究極の経験を求める一方、「本物らしさ」をより重視するようになった。
23アンドミーは、自宅でできるDNA検査キットだ。この名前は人間の細胞が持つ23対の染色体にちなんだもので、このキットを使えば自分の祖先や、特定の病気を発症しやすいかどうかなどの遺伝的特徴を知ることができる。
エアビーアンドビーが先月発表した23アンドミーとの提携により、検査を受けた人は自分のルーツである場所、そしてそうした土地で可能な体験について知ることができる。こうした旅により、自分の祖先に近づけるかもしれない。エアビーアンドビーは「メキシコにルーツを持つ人は、自分の先祖を知る旅の一環として、メキシコ市で古代から続く天然染料の技を学ぶ体験を見つけられるかもしれない」と説明している。
エアビーアンドビーによる今回の発表は、旅行が変化していることを示すほんの一例だ。こうした変化のけん引役となっているのが、旅行に休息とリラックスではなく体験を求めるミレニアル世代だ。また、海外旅行で自分の祖先について知る「ヘリテージ・トラベル」もこのトレンドの大きな一部となっている。
美食ツアーやフィットネスに重点を置いた宿泊も一般的になっており、施設内にフリークライミング用の壁があるホテルや、その人だけのウェルネス休暇を注文販売するしゃれたスタートアップも今では普通だ。
多くの旅行会社や代理店の間では、2000年頃に成人を迎え始めたミレニアル世代のニーズに対する注目が高まっている。旅行情報サイト「フロマーズ(Frommer’s)」によると、若年層は前の世代と違って常にインターネットにつながっている必要があり、ユニークな場所での滞在・活動を求めているという。
これは大手ホテルブランド離れにつながっており、大手ホテルの多くはブランドの再構築を進め、比較的小さく「ローカル」な選択肢を提供している。ヒルトン傘下の小規模高級ホテル「キャノピー(Canopy)」やハイアット傘下の「セントリック(Centric)」などでは、ホテルでの滞在が地元の知識とノウハウと共に提供されている。
■インスタが旅行業界に与える影響
こうした体験がインスタ映えするようであればなお良しだ。米誌ナショナルジオグラフィックによると、2017年の時点でもインスタグラムのユーザー(多くがミレニアル世代だ)は旅行のアイデアを投稿から得ていた。同誌は「インスタグラムは、5億人以上のアクティブユーザーを抱え、1日平均8000万枚の写真が共有されている。人々には画像に対する明らかな欲求があり、それが旅の決断に影響を与えている」と伝えている。
例えば、ニュージーランドのワナカ町は2015年、観光客の増加を狙い、インフルエンサーを町に招待した。そこで投稿された写真により、町への観光客は14%増加した。ワナカ当局はこのことを「素晴らしい資本利益率だった」としているが、まさにその通りだ。
こうした持続可能なウェルネス体験(その多くは高い値段が付けられている)では、旅行会社だけでなく旅行者にもより多くのものが要求されている。一昔前の旅では、ゆっくり休みリフレッシュして戻ってくることが唯一の目的だった。しかし現代の旅の目的は、自分の生き方について新しい考えを身につけ、違う人間になって休暇から戻ることだ。高級旅行企業ブラック・トマト(Black Tomato)は英誌ザ・ウイーク(The Week)の記事で「人々は他と違うだけでなく、変化をもたらすことを経験したいと思っている」と述べている。
このトレンドが、ミレニアル世代が大切にするもう一つの信念である環境問題とどれほど相容れられるものなのかは、まだ分からない。米誌コンデナスト・トラベラーが旅行分野でのトレンドメーカーとして選んだデービッド・アッテンボローやレオナルド・ディカプリオをはじめとする人々の多くは、世界を旅することと地球を守ることに挟まれた微妙な位置に立っている。今後、この2つが平和に共存できるとは考えにくい。(続きはソース)
6/4(火) 12:00配信
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