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青森
日本最北端の「猫碑」か 青森県内で初めて発見
2019年06月05日 水曜日
黒石市で石に猫の姿が彫られた「猫碑」が計3基見つかった。市史に石碑に関する記述はあるが、実物は確認されていなかった。うち2基を発見した宮城県村田町歴史みらい館の石黒伸一朗専門員(61)によると、青森県内での猫碑の発見は初めてで、日本最北端のものとみられる。
石黒さんが見つけた2基の猫碑は猫の姿が浮かび上がるように彫られ、高さ22〜24センチの大きさ。台座はなく、地面に置かれていた。いずれも三角形にとがっている頭部が特徴的という。
2基のうち、同市大川原で見つかった猫碑の正面には「奉納」「明治八年」の文字と右側面に「久三良立之(久三良之(これ)を立てる)」との文言が彫られていた。残る同市高舘の墓地にあった猫碑には、建立年などは彫られていなかった。
1985年発行の市史には2基の猫碑の所在地が記されている。石黒さんはこの情報を頼りに2011年秋に実物を発見し、今年5月、仙台市であった猫に関する講演会で初めて紹介。講演を聴いた福島市の会社役員阿部千里さん(57)が黒石市教委に問い合わせたことで、市教委も猫碑の存在を確認した。
石黒さんは「雪が多く寒い地域は猫との関係が希薄だと思っていたので、驚いている。猫と人との深い関わりを証明する資料だ」と語る。
猫を祭る文化は一般的に、蚕や繭をネズミから守る飼い猫を尊ぶ養蚕農家の信仰や、愛猫への供養の気持ちを表すものとされる。猫碑は養蚕が盛んだった宮城県丸森町や福島県北部など南東北に多く存在し、山形や秋田、岩手でも確認されている。
黒石市教委文化スポーツ課の田坂里穂学芸員(27)も5月、同市高舘の別の墓地で無縁仏と一緒に並ぶ新たな猫碑を発見した。田坂さんは「市の民俗や歴史を知る上で価値がある。丸森町の石碑などを参考に、猫碑を建てる風習があったのか調べたい」と話す。