「茨城ダッシュ」という言葉がある。名産品や観光名所ではなく、本県特有とされる危険運転を指す。具体的には交差点を右折する際、信号が赤から青に切り替わる瞬間、急発進して対向車よりも先に右折する運転だ。県内でよく見掛ける光景だが、交差点は本来、直進優先。右折車が道交法違反になるケースもある。県警は「重大事故につながる可能性を大いに秘めている。落ち着いて運転して」と注意を呼び掛ける。
◆「右直事故」発端
大津市の交差点で8日、車2台が衝突し、うち1台が歩道にいた保育園児の列に突っ込み、園児2人が死亡、13人が重軽傷を負う事故があった。2台は右折車と直進車で、発端はいわゆる「右直事故」だった。園児が巻き込まれた悲惨な事故をきっかけに、地域特有とされる危険運転が注目を集めている。
“ご当地危険運転”の種類はさまざま。対向車が交差点に進入してきているのに強引に右折する長野県松本市の「松本走り」や、横断歩道に歩行者がいても一時停止しない山梨県の「山梨ルール」、方向指示器(ウインカー)を出さずに車線変更する「名古屋走り」などと称される事例もあるという。
本県の「茨城ダッシュ」は、大津市の事故と同様、右直事故の危険をはらむ。直進車が危険を察知し、交差点に入るのをためらうケースもある。
◆「早く着きたい」
では、なぜ右折車は急ぐのか。「茨城ダッシュ」をしたことがある筑西市の会社員男性(54)は「危険な運転という認識はあったが、早く目的地へ着きたいという気持ちが上回ってしまう」と釈明。同じく水戸市の会社員女性(24)は「対向車の発進が遅いと、早く行きたいという気持ちが先走る」と語る。
県警交通総務課によると、「茨城ダッシュ」で対向車の進行を妨げた場合、道交法違反容疑で摘発される可能性もある。同課の担当者は「急いで曲がったとしても時間はさほど変わらない。自ら危険な状況をつくっていることを理解し、落ち着いて運転してほしい」と注意を呼び掛ける。
◆マナー悪さ3位
日本自動車連盟(JAF)が2016年6月に行った交通マナーに関するアンケートによると、自分自身が住んでいる都道府県の全般的な交通マナーについて「とても悪い」と回答した人の割合は、香川県が80%で最も多かった。2位は徳島県で73・5%。本県はそれに次ぐ67・2%に上り、全国3位だった。
県警交通指導課の担当者は、本県で交通マナーが「とても悪い」と感じている人の多さと「茨城ダッシュ」が横行する現状に、「一度自分の運転が危険かどうか見詰め直してほしい」とドライバーに促す。その上で「重大事故を防ぐためにも、危険な運転はこれからも厳重に取り締まっていく」と力を込めた。
茨城新聞 2019年6月1日(土)
https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=15593061763792