倫理委通さず研究、論文投稿の不正行為 国立循環器病研究センター
大阪府吹田市の国立循環器病研究センター(国循)は30日、内部の倫理審査委員会を通さず研究を実施し、論文を投稿した不正が2件あったと発表した。
論文撤回の手続きを進めており、研究に携わった小児科の男性医師の処分を検討する。
このほか、国の指針が定める手続きを怠った研究が2013年以降、156件あることが分かり、小川久雄理事長は同日、記者会見を開いて陳謝した。
国循によると、倫理審査委を通さなかった2件はいずれも診療結果や回復状況を調べる観察研究。
うち1件は終末期心不全患者への治療効果に関する研究で、不整脈科の男性医師(既に退職)が13年度に論文を投稿。
別の1件は、先天性の心臓病を持つ新生児への有効な手術法についての研究で、小児科の男性医師が18年度に論文投稿した。
それぞれの論文には、倫理審査委の承認を得たと虚偽の記載があった。
2人は内部調査に「先行研究などで同意を得ていたので不要だと思っていた。倫理委への申請の必要は後で気づいた」と事実を認めた。
一方、156件の研究はいずれも、診療データが載ったカルテを使った研究だったが、患者に研究への参加を拒否する機会を知らせる手続きを怠っていた。
参加の拒否については、郵送やホームページへの掲載、病棟への掲示などで患者に知らせるよう国の指針で定められている。
156件のうち6件は既に論文が掲載され、国循は撤回が相当とみて、手続きを検討する。残りの150件は、患者らに説明した上で研究を継続するという。
小川理事長は「信頼を損なう事態を深くおわびする。研究倫理の徹底と再発防止策の構築に努めたい」と述べた。【渡辺諒】
毎日新聞2019年5月30日 11時19分(最終更新 5月30日 11時34分)
https://mainichi.jp/articles/20190530/k00/00m/040/081000c