https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190316-00000013-mai-soci
がん患者が、体力が落ちて介護保険を使いたくなった時、保険適用を申請する書類に「末期がん」と記す必要はありません−−。
厚生労働省が先月、全国の都道府県に向けてこんな文書を出しました。「自分や家族のことを“末期”と書くのはつらい」との声が
数年前から上がっており、これに応えた形です。がんの患者・家族団体や医師らは「これを機会に、がん患者は積極的に保険を使い、
介護サービスを受けてほしい」と訴えています。
◇40歳から使える介護保険
がんが進むと体力が落ち、起き上がることさえつらいような状態になることがあります。
この時に介護保険が使えると、ヘルパーさんが家事や買い物、患者の入浴などを手伝ってくれる▽看護師さんが来て看護してくれる
▽車いすや、リクライニング装置がついて起き上がりやすい介護用ベッドなど福祉機器を借りられる−−などのサービスを、
低額の自己負担(本来かかる額の1〜3割)で受けられます(具体的なサービス内容は、介護の必要性がどの程度と認定されるかで違います)。
介護保険は高齢者のものだと思われがちですが、実は、一定の条件を満たせば、40歳から使えます。そしてこの保険を使うには、
市町村や区に申請して「要介護(支援)認定」を受ける必要があります。
40〜64歳の患者の場合、従来はこの認定の申請書に、自分の病状を「末期がん」や「がん末期」と記載しないと、認定を受けられない場合が
大半でした。それが今後は、ただ「がん」と書けばよくなったのです。
「末期」との記載が求められていたのには、次のような事情がありました。
介護保険法によると40〜64歳の人がこの保険を使えるのは、がんや認知症など「特定疾病」と呼ばれる16種類の病気にかかった
場合だけです。そして、がんの場合はさらに、医師が「回復の見込みがない状態に至ったと判断した」という条件がつきます。
厚労省はこれまで、この条件の説明としてホームページで「末期がん」という言葉を使っていました。このために多くの自治体が、
申請書でこの言葉を求めていたのです。
◇「末期」と言われたくない
これは、がん患者や家族にとって使いにくい制度でした。
がん患者の就労支援などをする一般社団法人「CSRプロジェクト」(本部・東京都千代田区)が2016年に、40〜64歳で亡くなった
がん患者の遺族を対象に実施した調査では、回答者200人のうち、患者が生前に介護保険の使用を「申請した」人は72人(36%)だけでした。
申請しなかった128人(64%)に理由を聞くと「末期がんという言葉に抵抗があった」「(患者が)末期がんだと知らなかった」などが挙がり、
「がん患者が使える制度だと知らなかった」も目立ちました。
自らも04年に乳がんと診断され、今は同プロジェクトの代表理事を務める桜井なおみさんは、この結果を「『末期がん』だと言われるのは、
患者も家族もいやです。医師も患者に『末期がんです』とは言いにくく、結果として『あなたは介護保険が使える病状です』とも伝えません。
だから『使える制度だと知らなかった』となるのです」と説明します。
さらに「患者が要介護認定を受けないと、家族は『介護休業』や『介護休暇』を取りにくい。その結果、仕事を休めずに『最期に寄り添えなかった』
と悔やむ家族や、逆に介護のために離職する家族が目立ちます」と指摘します。
なお厚労省によると、法律上は、要介護認定がなくても患者が他の条件を満たせば、会社は休業や休暇を認める必要があります。
でも桜井さんは「実態は、認めない会社が多い」と言います。
◇余命は医師にも分かりません
また医師からみると、「末期がん」という言葉は「余命わずか」という印象を与え、心情的な問題に加えて、医学的にも使いにくいのだそうです。
「余命の予測は専門医にもできない。できないことが過去の研究で証明されている」(勝俣範之・日本医科大武蔵小杉病院教授=腫瘍内科)からです。
こうした事情を踏まえて桜井さんは16年11月、自身がメンバーを務める厚労省の「がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会」で、
「末期がんという名称をぜひ変えていただきたい」と訴えました。検討会は同年12月に検討内容をまとめた報告書を出し「末期がん」という
書き方の改善を求めました。
がん患者が、体力が落ちて介護保険を使いたくなった時、保険適用を申請する書類に「末期がん」と記す必要はありません−−。
厚生労働省が先月、全国の都道府県に向けてこんな文書を出しました。「自分や家族のことを“末期”と書くのはつらい」との声が
数年前から上がっており、これに応えた形です。がんの患者・家族団体や医師らは「これを機会に、がん患者は積極的に保険を使い、
介護サービスを受けてほしい」と訴えています。
◇40歳から使える介護保険
がんが進むと体力が落ち、起き上がることさえつらいような状態になることがあります。
この時に介護保険が使えると、ヘルパーさんが家事や買い物、患者の入浴などを手伝ってくれる▽看護師さんが来て看護してくれる
▽車いすや、リクライニング装置がついて起き上がりやすい介護用ベッドなど福祉機器を借りられる−−などのサービスを、
低額の自己負担(本来かかる額の1〜3割)で受けられます(具体的なサービス内容は、介護の必要性がどの程度と認定されるかで違います)。
介護保険は高齢者のものだと思われがちですが、実は、一定の条件を満たせば、40歳から使えます。そしてこの保険を使うには、
市町村や区に申請して「要介護(支援)認定」を受ける必要があります。
40〜64歳の患者の場合、従来はこの認定の申請書に、自分の病状を「末期がん」や「がん末期」と記載しないと、認定を受けられない場合が
大半でした。それが今後は、ただ「がん」と書けばよくなったのです。
「末期」との記載が求められていたのには、次のような事情がありました。
介護保険法によると40〜64歳の人がこの保険を使えるのは、がんや認知症など「特定疾病」と呼ばれる16種類の病気にかかった
場合だけです。そして、がんの場合はさらに、医師が「回復の見込みがない状態に至ったと判断した」という条件がつきます。
厚労省はこれまで、この条件の説明としてホームページで「末期がん」という言葉を使っていました。このために多くの自治体が、
申請書でこの言葉を求めていたのです。
◇「末期」と言われたくない
これは、がん患者や家族にとって使いにくい制度でした。
がん患者の就労支援などをする一般社団法人「CSRプロジェクト」(本部・東京都千代田区)が2016年に、40〜64歳で亡くなった
がん患者の遺族を対象に実施した調査では、回答者200人のうち、患者が生前に介護保険の使用を「申請した」人は72人(36%)だけでした。
申請しなかった128人(64%)に理由を聞くと「末期がんという言葉に抵抗があった」「(患者が)末期がんだと知らなかった」などが挙がり、
「がん患者が使える制度だと知らなかった」も目立ちました。
自らも04年に乳がんと診断され、今は同プロジェクトの代表理事を務める桜井なおみさんは、この結果を「『末期がん』だと言われるのは、
患者も家族もいやです。医師も患者に『末期がんです』とは言いにくく、結果として『あなたは介護保険が使える病状です』とも伝えません。
だから『使える制度だと知らなかった』となるのです」と説明します。
さらに「患者が要介護認定を受けないと、家族は『介護休業』や『介護休暇』を取りにくい。その結果、仕事を休めずに『最期に寄り添えなかった』
と悔やむ家族や、逆に介護のために離職する家族が目立ちます」と指摘します。
なお厚労省によると、法律上は、要介護認定がなくても患者が他の条件を満たせば、会社は休業や休暇を認める必要があります。
でも桜井さんは「実態は、認めない会社が多い」と言います。
◇余命は医師にも分かりません
また医師からみると、「末期がん」という言葉は「余命わずか」という印象を与え、心情的な問題に加えて、医学的にも使いにくいのだそうです。
「余命の予測は専門医にもできない。できないことが過去の研究で証明されている」(勝俣範之・日本医科大武蔵小杉病院教授=腫瘍内科)からです。
こうした事情を踏まえて桜井さんは16年11月、自身がメンバーを務める厚労省の「がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会」で、
「末期がんという名称をぜひ変えていただきたい」と訴えました。検討会は同年12月に検討内容をまとめた報告書を出し「末期がん」という
書き方の改善を求めました。