2019年03月02日
https://www.agrinews.co.jp/p46909.html
豚コレラの拡大で、岐阜県や愛知県のジビエ(野生鳥獣の肉)関係者に深刻な影響が及んでいる。政府は野生イノシシへのワクチン(餌に混合)を3月から、まずは1年間設置し効果を検証する方針。当該地域の狩猟が規制されるため影響は長期化する見通しだ。狩猟から解体施設、加工所、特産品、地域振興まで及び、裾野は広い。狩猟者やジビエを扱う店からは、一刻も早い終息を願う声とともに「死活問題」「先行きが見えない」など切実な意見も出ている。
■ 遠のく地域活性化の夢
愛知県新城市作手地区。豚コレラに伴うイノシシの調査捕獲に向け、くくりわなを仕掛けながら、農家で狩猟者の鈴木康弘さん(66)は険しい表情を浮かべる。同市では感染したイノシシは発見されていないが、鈴木さんは「ジビエを核にもうかる地域を目指そうと頑張ってきた中で、大打撃」とうなだれる。
猟友会の同地区長を務め、後継者育成のため今春にはNPO法人発足も予定する鈴木さん。狩猟やジビエの加工・販売などに取り組む若者をけん引する存在だ。2年前から学校の跡地を解体場にしてジビエ肉を販売。旅館や店などで売り出す「ジビエ街道」をつくろうと仲間と構想を練ってきた。
特産品だけでなく、イノシシを活用したペットフードや皮革製品、都市住民に獣道を案内するツアーもしたいと考えていた。捕獲してもイノシシの大半を捨てていたことから「捨てるものに価値を生む」と夢を描いていた矢先だった。今後、計画を実行するにも風評被害に不安が募る。
農水省によると、豚コレラに伴うジビエへの支援策は現時点ではないという。このため鈴木さんは「仲間の中には死活問題になっている人もいる。狩猟から特産品まで現場は、これから豚コレラとの長い長い闘いを強いられる」と危機感を募らせる。現場への素早い情報伝達や、影響を受けるジビエ関係者への支援を求める。
※中略
狩猟ができていないのに、狩猟税が返金されないことも重い負担だ。総務省によると、災害などの場合、狩猟税の減免ができる条例を地方公共団体が作ることができる。しかし、地方税法には豚コレラに伴う狩猟禁止に関する記載がなく、狩猟税1万6500円(第一種銃猟の場合)などは狩猟者に返金できない。村上さんは「ジビエや狩猟をやめる人が出てくるのは間違いない。狩猟もジビエも長期間、下火になるだろう」と嘆く。
※以下省略