◆ 脳は組織が切断されていてもワイヤレスで接続する可能性がある
マウスの脳を使った実験で、脳の組織が切断されていても1つのニューロンから別のニューロンへ、ワイヤレスに接続できる可能性が示されました。
これまでに確認されていない全く新しい方法で脳がコミュニケーションを取っていると研究者はみています。
これまで、ニューロンは「シナプス伝達」「軸索輸送」「ギャップ結合」という3つの方法でコミュニケーションを取っていると考えられてきました。
一方、科学者たちは多くのニューロンが一斉に発火すると弱い電場が発生することを脳波測定で観察してきましたが、この活動は非常に小さいため神経活動にはあまり影響しないと考えられてきました。
しかし、医用生体工学の研究を行うDominique Durand教授らは、電場によって脳がこれまで知られていなかった方法でコミュニケーションを取っている可能性を示しました。
「私たちはまだ、この発見の『だから何?』という部分を理解していません。
しかし、これは脳における全く新しいコミュニケーションの方法であるという事実にとても興奮しています」とDurand氏は述べています。
Durand氏らの研究チームが行ったのはin vitro、つまり試験管内などの条件下で行う実験です。
マウスの頭部から抽出した海馬をスライスして脳波を観察したところ、ゆっくりした脳波の周期的活動が電場を発生させていたとのこと。
この電場は隣接する細胞を次々に活性化させ、シナプスを介した化学物質の伝送やギャップ結合を行わない神経系のコミュニケーションを構築していたそうです。
驚くべきことは、脳の組織が切断されていてもこのコミュニケーションが成立するということ。
スライスされた2つの脳の断片を物理的に隣接させた状態で置いていても、電場はニューロンを活性化させたそうです。
「2つにスライスされた組織は再びくっつけられましたが、顕微鏡で観察したところ、そこには明かな隙間がありました」と研究者は述べています。
Durand氏らの発表した研究結果は、一般人にはにわかには信じられない内容ですが、The Journal of Physiologyの審査委員会も同じで「論文を掲載するためにはもう一度実験を完了させる必要がある」と述べたそうです。
Durand氏らは審査委員会に従い慎重に実験を繰り返しましたが、やはり、結論は同じでした。
眠っている人間の海馬や大脳皮質でも脳波が比較的ゆっくりになりますが、なぜこのようなことが起こるのかは今だにはっきりしていません。
Durand氏は「このような脳波は長年知られてきましたが、誰もその機能について正確に知らず、それらが自発的に伝播するとは考えていませんでした」「私は海馬という脳の小さな一部分を40年にわたって研究してきましたが、今回の発見は驚くべきものです」と語っています。
マウスの脳で確認された新しい形のコミュニケーションが人間の脳でも同様に行われているのかどうかを理解するには、今後多くの研究が必要ですが、同様のコミュニケーションが人間の脳でも発見される可能性はあると研究者はみています。
GIGAZINE 2019年02月20日 15時00分
https://gigazine.net/news/20190220-discovering-new-form-brain-communication/
マウスの脳を使った実験で、脳の組織が切断されていても1つのニューロンから別のニューロンへ、ワイヤレスに接続できる可能性が示されました。
これまでに確認されていない全く新しい方法で脳がコミュニケーションを取っていると研究者はみています。
これまで、ニューロンは「シナプス伝達」「軸索輸送」「ギャップ結合」という3つの方法でコミュニケーションを取っていると考えられてきました。
一方、科学者たちは多くのニューロンが一斉に発火すると弱い電場が発生することを脳波測定で観察してきましたが、この活動は非常に小さいため神経活動にはあまり影響しないと考えられてきました。
しかし、医用生体工学の研究を行うDominique Durand教授らは、電場によって脳がこれまで知られていなかった方法でコミュニケーションを取っている可能性を示しました。
「私たちはまだ、この発見の『だから何?』という部分を理解していません。
しかし、これは脳における全く新しいコミュニケーションの方法であるという事実にとても興奮しています」とDurand氏は述べています。
Durand氏らの研究チームが行ったのはin vitro、つまり試験管内などの条件下で行う実験です。
マウスの頭部から抽出した海馬をスライスして脳波を観察したところ、ゆっくりした脳波の周期的活動が電場を発生させていたとのこと。
この電場は隣接する細胞を次々に活性化させ、シナプスを介した化学物質の伝送やギャップ結合を行わない神経系のコミュニケーションを構築していたそうです。
驚くべきことは、脳の組織が切断されていてもこのコミュニケーションが成立するということ。
スライスされた2つの脳の断片を物理的に隣接させた状態で置いていても、電場はニューロンを活性化させたそうです。
「2つにスライスされた組織は再びくっつけられましたが、顕微鏡で観察したところ、そこには明かな隙間がありました」と研究者は述べています。
Durand氏らの発表した研究結果は、一般人にはにわかには信じられない内容ですが、The Journal of Physiologyの審査委員会も同じで「論文を掲載するためにはもう一度実験を完了させる必要がある」と述べたそうです。
Durand氏らは審査委員会に従い慎重に実験を繰り返しましたが、やはり、結論は同じでした。
眠っている人間の海馬や大脳皮質でも脳波が比較的ゆっくりになりますが、なぜこのようなことが起こるのかは今だにはっきりしていません。
Durand氏は「このような脳波は長年知られてきましたが、誰もその機能について正確に知らず、それらが自発的に伝播するとは考えていませんでした」「私は海馬という脳の小さな一部分を40年にわたって研究してきましたが、今回の発見は驚くべきものです」と語っています。
マウスの脳で確認された新しい形のコミュニケーションが人間の脳でも同様に行われているのかどうかを理解するには、今後多くの研究が必要ですが、同様のコミュニケーションが人間の脳でも発見される可能性はあると研究者はみています。
GIGAZINE 2019年02月20日 15時00分
https://gigazine.net/news/20190220-discovering-new-form-brain-communication/