https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190220-00000000-ykf-int
米国の大物議員が、韓国に「重大警告」を発した。「従北・離米」の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮への経済制裁解除に傾斜していることを批判する書簡を、マイク・ポンペオ米国務長官に送ったのだ。韓国メディアも敏感に反応し、経済苦境のなか、韓国の銀行や企業が制裁対象になる恐れを指摘した。「北朝鮮の非核化」を迫る2回目の米朝首脳会談(27、28日)を見据えて、米国の怒りに火を付けかねない事態だ。
「米韓同盟は、わが国の安全保障にとって極めて重要であり、文大統領が、正恩氏とその政権に対する制裁を解除した場合の不必要な緊張を緩和することが大切だ」「文政権は、われわれの北朝鮮政府に対する交渉力を弱めている」
テッド・クルーズ上院議員(共和党)は、ポンペオ氏宛ての書簡で、こう力説した。痛烈な、文政権批判というしかない。米紙ワシントン・ポスト(電子版)が14日伝えた。
クルーズ氏は、2016年大統領選の共和党候補指名争いで、ドナルド・トランプ大統領を終盤まで苦しめたことで知られる。米南部テキサス州選出の保守系大物だ。同書簡は、かつて上院外交委員長を務めた民主党大物のロバート・メネンデス上院議員とともに、超党派で提出された。
両上院議員は書簡で、文政権が南北共同事業である「開城(ケソン)工業団地の再開」に意欲を見せていることなどを、具体的な“問題行動”として挙げている。
同工業団地をめぐっては、国連安全保障理事会で北朝鮮制裁決議の履行状況を監視する専門家パネルの調査で、韓国が昨年、南北共同連絡事務所で使われる石油精製品約340トンを、安保理に無許可で北朝鮮に持ち込む「制裁違反」をしたことも発覚している。
文大統領は昨年10月、欧州を歴訪して、英国やフランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、EU(欧州連合)などの首脳らと会談し、「北朝鮮の制裁緩和」を説得する外交を展開した。
前出のワシントン・ポストは「(大物議員による)書簡は、対北朝鮮制裁は、一連の国連決議と米国の法律によって科せられていることを、トランプ政権と文政権双方に思い起こさせている」と指摘した。つまり、「韓国には対北制裁を緩和する権限はない=韓国は制裁緩和で勝手に動くな」という警告といえる。
米国は、昨年12月に発生した、韓国海軍駆逐艦による、海上自衛隊P1哨戒機への危険な火器管制用レーダー照射問題についても、強い疑念を持っている。
日米情報当局関係者は「日本は複数のルートで、具体的証拠を示してレーダー照射の事案について米国側に説明した。結果、米国側は『韓国は、海軍駆逐艦と海洋警察警備艇、北朝鮮船舶による“接触の真実”を隠すため、海自哨戒機を威嚇して追い払ったのではないか』と分析した。つまり、『韓国は裏切っている可能性がある』と再認識した」と明かす。
こうした動きに、韓国メディアは敏感に反応した。
朝鮮日報(日本語版)は16日、社説で「両議員(=クルーズ、メネンデス両議員)が、文大統領と康京和(カン・ギョンファ)外相を名指しし、米国における制裁関連の法律に違反している可能性に言及したことは大きな問題だ」とし、次のように結んだ。
「米議会とメディアを通じて伝えられた警告を今後も聞き流しているようでは、韓国の企業や銀行がある日突然厳しい困難に直面してしまうかもしれない」
ただでさえ、韓国経済は苦境にある。
韓国銀行(中央銀行)が1月に発表した2018年のGDP(国内総生産)成長率は前年比2・7%(速報値)で、12年(2・3%)以来、6年ぶりの低水準となった。
雇用状況も低迷している。今年1月の失業者数は122万4000人で前年同期から、20万4000人も増えた。
米国が制裁を発動すれば、致命的打撃となりかねない。