◆ 携帯料金値下げには他にも方法がある。総務省緊急提言に異議あり
2019年1月17日に総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会(以下、研究会)」と「ICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの検証に関するワーキンググループ(以下、ワーキンググループ)」は「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言」を発表した。
この提言は通信料金と端末料金の完全分離、行き過ぎた期間拘束の禁止、合理性を欠く料金プランの廃止、販売代理店の適正性の確保等が柱になっており、携帯電話業界に大きなインパクトを及ぼす内容となっている。
特に通信料金と端末料金の完全分離の影響は大きい。
携帯電話端末を値引いて通信サービスを契約してもらうというバンドル販売ができなくなるからだ。
携帯電話端末を頻繁に買い替える人にとっては通信料金に端末料金を上乗せして支払う仕組みはメリットがあるが、そうでない人にとっては他人の携帯電話買い替えコストまで負担させられていて不公平だという声は従来からあった。
今回の完全分離でそのような不公平感は解消されるし、携帯電話会社間の乗換も容易になる。
■ 日系メーカーには撤退する企業も
一方で、携帯電話の端末料金は大きく値上がりし、消費者は買い替え時に、例えばiPhone等の最新機種では10万円以上の一次的支出を余儀なくされる。
携帯電話端末の売れ行きは悪化し、特に日系携帯電話メーカーはただでさえ絶滅の危機にさらされているのに、撤退するところも出てくるだろう。
携帯電話の販売代理店も携帯電話端末の販売に伴う収入が激減し、店舗の閉鎖を余儀なくされるところも出てくるだろう。
肝心の携帯電話の料金だが、安くなるかどうかは携帯電話会社の経営判断次第である。
既に値下げを発表している携帯電話会社もあるが、これは政府の圧力を受けたものだろう。
大手キャリア3社による実質的寡占市場が続く間、継続的に競争メカニズムが有効に働くかどうかはわからない。
ここで、今回の緊急提言に関する検討プロセスと提言内容の各側面における課題点や代替策を考えてみたい。
■ イタチごっこやめるために
政府の「4割値下げ」要請発言後、ドコモは2割から4割の値下げを予定しているという方針を発表した。
携帯電話の料金政策については、自由化されているにも関わらず、最近、毎年のように総務省で有識者会議が組織され、その都度、さまざまな提言が発表されてきた。
例えば2015年10月から12月まで総務省のICTサービス安心・安全研究会のもとに「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」が、2016年10月から11月まで同研究会のもとに「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」が、2016年1月から2018年11月までの間には「電気通信市場検証会議」が、さらに2017年12月から2018年4月までは「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」がそれぞれ開催されてきた。
公正取引委員会でも2018年4月から5月にかけて、「携帯電話分野に関する意見交換会」が設置された。
しかし、一連の政策提言は当局と携帯電話会社の間でのイタチごっこを招いた。
典型的な例は今回の提言にも盛り込まれている端末の4年縛りの禁止であろう。
もともとこれは当局が2年縛りを問題視し、他方で消費者の月々の負担を軽減するために、携帯電話会社が工夫して生み出したものである。
規制に対応して捻り出したプランを禁止されてしまっては携帯電話会社は将来事業環境への予見性を失い、結果として企業活動が委縮する。
このような当局と携帯電話会社間のイタチごっこと、毎年のように開催される有識者会議の検討状況に危機感を覚え、研究会とワーキンググループの上部組織である「情報通信審議会 電気通信事業政策部会 電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証に関する特別委員会」の構成員でもある筆者は2018年10月4日の第1回会合で、これまでの検討経緯をきちんとレビューしてから政策を立案すべきであると進言した。
■ 数字の裏付けのない再建計画
残念ながら、この発言がなかったかのごとく、研究会とワーキンググループは2018年11月26日の会合でいきなり緊急提言(案)を提案した。
総務省の携帯電話政策の不思議なところは、過去の政策の効果について、きちんとした定量分析や定性分析を行わないまま、次々と新しい政策案を出してくること、すなわちPDCAサイクルを全く回していないことである。
※続きは下記のソースでご覧ください
ビジネスインサイダー 2019/02/19
https://www.businessinsider.jp/post-185439
2019年1月17日に総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会(以下、研究会)」と「ICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの検証に関するワーキンググループ(以下、ワーキンググループ)」は「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言」を発表した。
この提言は通信料金と端末料金の完全分離、行き過ぎた期間拘束の禁止、合理性を欠く料金プランの廃止、販売代理店の適正性の確保等が柱になっており、携帯電話業界に大きなインパクトを及ぼす内容となっている。
特に通信料金と端末料金の完全分離の影響は大きい。
携帯電話端末を値引いて通信サービスを契約してもらうというバンドル販売ができなくなるからだ。
携帯電話端末を頻繁に買い替える人にとっては通信料金に端末料金を上乗せして支払う仕組みはメリットがあるが、そうでない人にとっては他人の携帯電話買い替えコストまで負担させられていて不公平だという声は従来からあった。
今回の完全分離でそのような不公平感は解消されるし、携帯電話会社間の乗換も容易になる。
■ 日系メーカーには撤退する企業も
一方で、携帯電話の端末料金は大きく値上がりし、消費者は買い替え時に、例えばiPhone等の最新機種では10万円以上の一次的支出を余儀なくされる。
携帯電話端末の売れ行きは悪化し、特に日系携帯電話メーカーはただでさえ絶滅の危機にさらされているのに、撤退するところも出てくるだろう。
携帯電話の販売代理店も携帯電話端末の販売に伴う収入が激減し、店舗の閉鎖を余儀なくされるところも出てくるだろう。
肝心の携帯電話の料金だが、安くなるかどうかは携帯電話会社の経営判断次第である。
既に値下げを発表している携帯電話会社もあるが、これは政府の圧力を受けたものだろう。
大手キャリア3社による実質的寡占市場が続く間、継続的に競争メカニズムが有効に働くかどうかはわからない。
ここで、今回の緊急提言に関する検討プロセスと提言内容の各側面における課題点や代替策を考えてみたい。
■ イタチごっこやめるために
政府の「4割値下げ」要請発言後、ドコモは2割から4割の値下げを予定しているという方針を発表した。
携帯電話の料金政策については、自由化されているにも関わらず、最近、毎年のように総務省で有識者会議が組織され、その都度、さまざまな提言が発表されてきた。
例えば2015年10月から12月まで総務省のICTサービス安心・安全研究会のもとに「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」が、2016年10月から11月まで同研究会のもとに「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」が、2016年1月から2018年11月までの間には「電気通信市場検証会議」が、さらに2017年12月から2018年4月までは「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」がそれぞれ開催されてきた。
公正取引委員会でも2018年4月から5月にかけて、「携帯電話分野に関する意見交換会」が設置された。
しかし、一連の政策提言は当局と携帯電話会社の間でのイタチごっこを招いた。
典型的な例は今回の提言にも盛り込まれている端末の4年縛りの禁止であろう。
もともとこれは当局が2年縛りを問題視し、他方で消費者の月々の負担を軽減するために、携帯電話会社が工夫して生み出したものである。
規制に対応して捻り出したプランを禁止されてしまっては携帯電話会社は将来事業環境への予見性を失い、結果として企業活動が委縮する。
このような当局と携帯電話会社間のイタチごっこと、毎年のように開催される有識者会議の検討状況に危機感を覚え、研究会とワーキンググループの上部組織である「情報通信審議会 電気通信事業政策部会 電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証に関する特別委員会」の構成員でもある筆者は2018年10月4日の第1回会合で、これまでの検討経緯をきちんとレビューしてから政策を立案すべきであると進言した。
■ 数字の裏付けのない再建計画
残念ながら、この発言がなかったかのごとく、研究会とワーキンググループは2018年11月26日の会合でいきなり緊急提言(案)を提案した。
総務省の携帯電話政策の不思議なところは、過去の政策の効果について、きちんとした定量分析や定性分析を行わないまま、次々と新しい政策案を出してくること、すなわちPDCAサイクルを全く回していないことである。
※続きは下記のソースでご覧ください
ビジネスインサイダー 2019/02/19
https://www.businessinsider.jp/post-185439