2019年1月22日
学校法人京都薬科大学
ダウン症の病態メカニズムに新たな知見
―世界初、ダウン症の酸化ストレス亢進に銅蓄積が関与することを見いだす―
京都薬科大学病態生化学分野の石原慶一講師、秋葉 聡教授らの共同研究グループは、これまでメカニズムが不明であったダウン症における脳での酸化ストレス亢進に銅蓄積が関与していることを見いだしましたので報告します。
これは、銅の量的変動がダウン症の病態に関与している可能性を示唆する新規知見であり、今後のダウン症の病態メカニズムの理解、治療法の開発に大きく貢献すると期待できます。
本研究の成果は、2019年1月18日(米国東部時間)に米国の国際学術誌「Free Radical Biological & Medicine」のオンライン速報版で発表されました。
<研究概要>
ダウン症は、約700人に1人の確率で発生する最も頻度の高い染色体異常として知られており、通常2本の21番染色体が3本(トリソミー)となることで精神発達遅滞や記憶学習障害といった様々な症状を呈します。これらダウン症の症状には酸化ストレスの亢進の関与が示唆されており、実際に、石原らはダウン症モデルマウスの脳における酸化ストレスの亢進を明らかにしていました(注1)。しかし、“ダウン症において、なぜ酸化ストレスが亢進するのか”、については不明でした。
今回、共同研究グループは、金属イオンを含む多くの元素量を網羅的に解析できるメタロミクス解析技術を用いて、ダウン症モデルマウスの脳において銅が過剰に蓄積していることを発見。さらに、銅低減食を与えることで、脳での酸化ストレス亢進や一部の異常行動を抑制することを見いだしました。
本成果は、ダウン症の酸化ストレスの亢進やダウン症の症状において銅の蓄積の関与を示唆するものであり、今後、病態メカニズムの理解、治療法の開発に大きく貢献すると期待できます。
【画像: 】
図.本研究の概要図:
ダウン症モデルマウスの脳での銅蓄積を見出し、低銅食投与により酸化ストレスの亢進および不安様行動の低下が軽減されたことから、銅蓄積によってこれらの異常表現型が起こることが示唆された。
<備考>
本研究は、文科省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「バイオメタルと生体反応の連関解明に基づいた疾患治療ファルマコメタロミクスの確立」(S1201008)、文科省科学研究費補助金・基盤研究(C)(18K06940)、公益財団法人 武田科学振興財団の薬学系研究助成などの支援を受けて行なわれました。
(注1)Ishihara et al., “Increased lipid peroxidation in Down's syndrome mouse models.” J. Neurochem. 110:1965-76 (2009).
<発表雑誌>
雑誌名:
Free Radical Biological & Medicine
https://japan.cnet.com/release/30293335/
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