むつ市のむつ総合病院は2019年度、非常勤医師をヘリコプターで送迎する実証実験を始める。青森県内の都市部からの「通勤圏」とすることで、医師不足対策につなげるのが狙い。全国的に例がなく、医師不足に悩む地域の「処方箋(せん)」になるか注目される。
実証実験は、仙台市のヘリ運航業者と委託契約を結び、弘前大病院(弘前市)や県立中央病院(青森市)から応援に来る医師を送迎する計画。ドクターヘリのような緊急時の診療ではなく、通常の診察に当たる医師を対象とするのが特徴だ。
むつ総合病院まで車だと弘前市から片道約2時間45分かかるが、ヘリ利用なら約30分で到着できる。青森市からの所要時間は約2時間から約20分になる。
むつ市は現在、運転の負担軽減を図るため、車による医師送迎を試行している。ヘリを使った送迎に伴う時間短縮などの実証が加わることで、日帰りでの医師派遣が可能になり、ローテーションが組みやすくなることが期待される。
19年度は、数回のヘリ実証実験を予定しており、費用は数千万円の見込み。病院運営主体の市は、国や県の補助金で利用できるメニューがあるかどうか探している段階だが、前例がなく難航している。該当する補助事業が見つからない場合は単独で予算を付ける。
むつ総合病院は、必要医師数61人に対し、常勤医は41人にとどまる。脳神経外科、心臓血管外科など9科で常勤医がおらず、派遣に頼っている。
むつ市によると、ヘリを使った医師送迎は長崎県の離島で実施しているが、都市部と陸地でつながる地域での実施例はない。高速道路網が未完成の下北半島は、非常勤医の通勤が大きな負担になっている。
宮下宗一郎市長は「常勤医をすぐに増やすことは難しい。医師がヘリで通勤できる環境を整えて常勤医のような勤務ローテーションを確立し、医療水準の向上を目指したい」と話した。
2019年01月15日 火曜日
https://sp.kahoku.co.jp/tohokunews/201901/20190115_23029.html