日没が早まり、夕方の交通事故が目立つ年末。日本損害保険協会(損保協会)は毎年、都道府県ごとに「危ない交差点」を公表し、注意を呼び掛けている。実際に記者が歩いてみると、現場に潜む危険性が見えてきた。 (奥村圭吾)
東京都板橋区の熊野町交差点。国道川越街道と都道山手通りが交わり、昨年重傷一件、軽傷十八件の事故があった。都内で最も危ない交差点とされる。
今月中旬の夕方、たくさんの車が行き交う交差点には制服姿の警察官が立ち、危険な運転に目を光らせていた。しかし、信号が赤に変わる直前も車が慌ただしく交差点に入っていく。前の車との車間距離は狭く、追突しそうになり急ブレーキを踏む車も多い。
右折を待つ車の運転手は、向かい側から来る右折車の列で、直進して来る車の様子を確認しづらそうだ。特に日没前後は、まだヘッドライトをつけていない車が多く、対向車と衝突する恐れがあると感じた。
この交差点では、昨年人身事故十九件のうち、右折車と向かい側から来る直進車との事故が十四件を占めた。直進車の陰からバイクや自転車が来ることもあり、十分注意が必要だ。
さらに、交差点の上には首都高速道路が走り、その橋脚が視界を遮る形になっている。横断歩道を歩いていたお年寄りの女性が危うく車にはねられそうになる場面もあった。
損保協会は二〇〇八年から、全国地方新聞社連合会と連携し、都道府県ごとの交通事故のデータを収集。人身事故の多い危険な交差点各五カ所をホームページで公表している。
都内では熊野町に続き、青戸八丁目(葛飾区)、瀬田(世田谷区)、蔵前一丁目(台東区)、和田倉門(千代田区)が危険度が高い。首都圏の各県では、車線数や交通量の多い国道が絡む元総社町南(前橋市元総社町)や三橋二(さいたま市大宮区)といった大規模交差点がワーストに選ばれた。
国道は朝夕を中心に、トラックやバスなどの大型貨物車の流入による断続的な渋滞が発生し、追突事故などが多発する。
さらに、金港町(横浜市神奈川区)、佐野新都市(栃木県佐野市)、若松町(茨城県土浦市)は国道交差点であるのに加え、交差点の周囲に高速道路や陸橋の橋脚などが立つ構造的な要因も抱える。これらの建造物により見通しが悪くなり、右折と直進の車の衝突事故などを招いているという。
協会の担当者は「危険を予測する心構えを持って運転してほしい」と話す。
交通事故が多発する熊野町交差点=22日午後4時57分、東京都板橋区で
各都道府県の最も危ない交差点
2018年12月25日 東京新聞朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122502000127.html