毎日新聞 2018年12月15日 06時30分(最終更新 12月15日 06時30分)
元ホームレスなど生活の苦しい人たちが利用する無料低額宿泊所について、厚生労働省は14日、一部屋を間仕切りで複数に分けた「簡易個室」を段階的に廃止する方針を明らかにした。利用者を劣悪な環境下に押し込めて生活保護費を搾取する「貧困ビジネス」を排除する狙いで、都道府県が来年度中に作る条例への反映を求める。17日の有識者会議に案を示す。
今年1月、火災で11人が死亡した札幌市の自立支援住宅「そしあるハイム」は、法的位置付けがないまま生活保護受給者に居室を提供していた。火災を受け、国は生活困窮者自立支援法や社会福祉法を改正。これまで定義が不明瞭だった無料低額宿泊所に都道府県条例で最低基準を設け、自治体は施設に届け出を促したり、違反する施設に改善命令を出したりできる仕組みになった。
厚労省によると、7月時点で自治体に届け出ていた無料低額宿泊所569施設(約1万6600室)を対象にした調査では、78施設の約3200室がベニヤ板などで仕切っただけの簡易個室だった。約1100室が相部屋で、3畳に相当する4・95平方メートル未満の部屋が約900あった。
厚労省が示した基準案では、居室は原則7・43平方メートル(4畳半)以上の個室で、隣の音がつつぬけでプライバシーが確保しにくい簡易個室は「段階的に解消する」とした。経過措置として、既存の簡易個室や相部屋は条件付きで使用を認める。地域事情でこれより狭い部屋を認めることも可能とした。
今後の有識者会議では、防火体制や事業者の情報開示のあり方も議論し、来春までに厚労省が基準を省令としてまとめる。【原田啓之】
https://mainichi.jp/articles/20181214/k00/00m/040/250000c