WEBコンテンツ制作会社の「人間」は11月23日の勤労感謝の日に合わせ、参加型イベント「THE BLACK HOLIDAY」を東京都新宿区某所で開催した。
同イベントは新入社員として架空のブラック企業に入社した参加者が、『ブラック企業』の被害をリアルに体感する参加型演劇だ。
ブラック企業アナリストの新田龍氏が監修し、劇団子供鉅人の益山貴司代表が脚本・演出を務めた。実際のブラック企業経験談をもとに制作されているのが特徴だ。
キャリコネニュース編集部も22日の回に参加してみた。
(中略)
■社訓を大声で読み上げるとだんだん楽しくなってくる 先輩も褒めてくれる
写真:ブラック企業体験イベント「THE BLACK HOLIDAY」開催
当日、開演時間15分前に到着したにも関わらず「遅いよ! 新人は30分前に着いて掃除しなくちゃ!」と叱られた。
社内に入った瞬間、先輩社員に大声で「おはようございます!」と言われ、普通に返すと「声が小さい!」と怒鳴られる。
会場はビルの一室、普通のオフィスのような場所だ。しかし壁には「残業なき労働に価値なし」「夏の温度設定30度 冬の温度設定16度」「土曜日が出勤日になります」などの張り紙が貼ってある。
新人は早めに出社して掃除をするのがルールのようで、「キレイにしろ」「かたまって掃除してんじゃねーよ」という怒号を浴びせられながら雑巾がけを行う。
やがて、他の新入社員も来た。始業前にもかかわらず「遅いんだよ!」と怒られており、早く来てよかった、と心底安堵した。
朝礼が始まると、新人研修担当3人が会社について説明する。「多少厳しい言葉は、愛のムチだと思って欲しい」「トイレに行きたい、急用があると離席するのは構わん。
その分の時給は、給料から天引きする」など伝えられる。そのたび執拗に「返事をしろ!」と言われ、普段の3倍くらいの声で応える。
続いて社訓を読まされる。「私たちは人類の健康に寄与します」「私たちはお客様の笑顔を追求します」など一見すると普通だが、1つ1つ読み上げるごとに「スーパーミラクルハッピー!」と社名を言い、
決められた動きをしなければいけない。当然大声だ。最初は少し引いたものの、やっていくうちに楽しくなる。ちゃんとすれば先輩は褒めてくれるのだ。
写真:「スーパー!ミラクル!ハッピー!」と言わされているところ
しかし声が小さい人は、他の社員の前で怒られる。また1週間徹夜してヘロヘロの男性は、「見本にならない」と謝罪を強要されていた。そんな中、研修担当から、
「営業はガッツと根性なんだよ」「1週間くらいの徹夜は我慢しろ。お前ら出来るな?」「会社の幸せはお前の幸せなんだよ!」
と言われる。出来るか否かじゃない、やるかやらないかだ。やっと朝礼が終わったかと思えば「みなさんのタイムカード、こっちで切っておきますから」という声。掃除も朝礼も勤務時間としてみなされていなかった。
(中略)
同イベントは、擬似的にブラック企業を体験することで「本当にいい職場とは何か」を考えるきっかけになれば、というのが趣旨だ。しかし筆者としては、なぜブラック企業務めの人間が辞められないかの理由がわかったような気がした。
怒声にまみれた中に居続けると、自己肯定感が低くなる。自分がダメだから仕方ない、とひたすらに仕事に打ち込むしかない。そして何より、先輩の要望に応えられたら、思いっきり褒めてくれるのだ。適切なアメとムチは、社畜を生み出すことがわかった。
終演後、教育担当役としても出演していた益山代表は、「参加型演劇なので反抗されたらどうしようと思っていたけど『教育担当』『新入社員』の役割が与えられたことで、参加者がその役を果たそうとしているのが怖かった。
参加者が従順になればなるほど、こちらの発言や行動が過激になった」と話していた。心理学でいうミルグラム実験のように、ブラック企業務めの人間が、自身を「社畜」「ブラック勤務」と定義することで、負のループに陥ることもあるのかもしれない。
参加した大学4年生の男性は「来年から社会人なので、ブラック企業に入ってしまった場合の対策のために参加した。でもたった1時間半でこの会社に染まってしまったので、実際にブラックだったとしても受け入れてしまうのではないかと心配になった」と語っていた。
ソース:キャリコネニュース
https://news.careerconnection.jp/?p=63130
2018.11.23
同イベントは新入社員として架空のブラック企業に入社した参加者が、『ブラック企業』の被害をリアルに体感する参加型演劇だ。
ブラック企業アナリストの新田龍氏が監修し、劇団子供鉅人の益山貴司代表が脚本・演出を務めた。実際のブラック企業経験談をもとに制作されているのが特徴だ。
キャリコネニュース編集部も22日の回に参加してみた。
(中略)
■社訓を大声で読み上げるとだんだん楽しくなってくる 先輩も褒めてくれる
写真:ブラック企業体験イベント「THE BLACK HOLIDAY」開催
当日、開演時間15分前に到着したにも関わらず「遅いよ! 新人は30分前に着いて掃除しなくちゃ!」と叱られた。
社内に入った瞬間、先輩社員に大声で「おはようございます!」と言われ、普通に返すと「声が小さい!」と怒鳴られる。
会場はビルの一室、普通のオフィスのような場所だ。しかし壁には「残業なき労働に価値なし」「夏の温度設定30度 冬の温度設定16度」「土曜日が出勤日になります」などの張り紙が貼ってある。
新人は早めに出社して掃除をするのがルールのようで、「キレイにしろ」「かたまって掃除してんじゃねーよ」という怒号を浴びせられながら雑巾がけを行う。
やがて、他の新入社員も来た。始業前にもかかわらず「遅いんだよ!」と怒られており、早く来てよかった、と心底安堵した。
朝礼が始まると、新人研修担当3人が会社について説明する。「多少厳しい言葉は、愛のムチだと思って欲しい」「トイレに行きたい、急用があると離席するのは構わん。
その分の時給は、給料から天引きする」など伝えられる。そのたび執拗に「返事をしろ!」と言われ、普段の3倍くらいの声で応える。
続いて社訓を読まされる。「私たちは人類の健康に寄与します」「私たちはお客様の笑顔を追求します」など一見すると普通だが、1つ1つ読み上げるごとに「スーパーミラクルハッピー!」と社名を言い、
決められた動きをしなければいけない。当然大声だ。最初は少し引いたものの、やっていくうちに楽しくなる。ちゃんとすれば先輩は褒めてくれるのだ。
写真:「スーパー!ミラクル!ハッピー!」と言わされているところ
しかし声が小さい人は、他の社員の前で怒られる。また1週間徹夜してヘロヘロの男性は、「見本にならない」と謝罪を強要されていた。そんな中、研修担当から、
「営業はガッツと根性なんだよ」「1週間くらいの徹夜は我慢しろ。お前ら出来るな?」「会社の幸せはお前の幸せなんだよ!」
と言われる。出来るか否かじゃない、やるかやらないかだ。やっと朝礼が終わったかと思えば「みなさんのタイムカード、こっちで切っておきますから」という声。掃除も朝礼も勤務時間としてみなされていなかった。
(中略)
同イベントは、擬似的にブラック企業を体験することで「本当にいい職場とは何か」を考えるきっかけになれば、というのが趣旨だ。しかし筆者としては、なぜブラック企業務めの人間が辞められないかの理由がわかったような気がした。
怒声にまみれた中に居続けると、自己肯定感が低くなる。自分がダメだから仕方ない、とひたすらに仕事に打ち込むしかない。そして何より、先輩の要望に応えられたら、思いっきり褒めてくれるのだ。適切なアメとムチは、社畜を生み出すことがわかった。
終演後、教育担当役としても出演していた益山代表は、「参加型演劇なので反抗されたらどうしようと思っていたけど『教育担当』『新入社員』の役割が与えられたことで、参加者がその役を果たそうとしているのが怖かった。
参加者が従順になればなるほど、こちらの発言や行動が過激になった」と話していた。心理学でいうミルグラム実験のように、ブラック企業務めの人間が、自身を「社畜」「ブラック勤務」と定義することで、負のループに陥ることもあるのかもしれない。
参加した大学4年生の男性は「来年から社会人なので、ブラック企業に入ってしまった場合の対策のために参加した。でもたった1時間半でこの会社に染まってしまったので、実際にブラックだったとしても受け入れてしまうのではないかと心配になった」と語っていた。
ソース:キャリコネニュース
https://news.careerconnection.jp/?p=63130
2018.11.23