日中韓やインド、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国による広域の自由貿易圏づくりが難航している。14日に開いた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉参加国の首脳会合では目標としていた年内の実質妥結を断念し、2019年中に妥結を目指す方針を確認した。
13年に交渉を始めたRCEPは実現すれば世界の人口の半分、国内総生産(GDP)や貿易額の3割をカバーする巨大な自由貿易協定(FTA)になる。アジア太平洋地域では12月30日に米国を除く11カ国の環太平洋経済連携協定(TPP11)が発効するが、RCEPはアジアの経済大国の中国、インドや韓国も入っている。
ただ、大国が入っているだけに交渉も簡単ではない。高いレベルの自由化を求める日本やオーストラリアなどと、大幅な市場開放や自由化に慎重な中国、インドなどとの対立の構図が続いていた。
米国との通商摩擦を抱える中国は交渉妥結に前向きになってきたが、来年に総選挙があるインドは関税撤廃などに慎重だ。毎年のように交渉妥結を目指して断念ということを繰り返していくと、まとめようという機運が弱まり交渉が漂流しかねない。
米国第一主義を掲げるトランプ政権が、強硬な2国間通商交渉を進めるなかで、多国間の自由貿易主義を守るにはRCEPは重要な手段のひとつだ。特に知的財産権保護や電子商取引のルールに中国を取り込む意義は大きい。
日本はオーストラリアなどと連携し、RCEPが質の高いFTAになるよう交渉をまとめる努力を強めるべきだ。
日本はTPP11に続いて、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)も妥結し、来年初めに発効する見通しだ。一方、米国との間では2国間の物品貿易協定(TAG)の交渉も始める。日本は米国による高率自動車関税の発動を回避しつつ、保護主義に対抗するため多国間の自由貿易圏づくりを主導する必要がある。
米国の保護主義には反対すべきだが、中国の知財権侵害に対応した世界貿易機関(WTO)改革などでは米国との連携も重要だ。安倍晋三首相は、トランプ米大統領にも、多国間の自由貿易体制の維持や、米国がTPPなどアジア太平洋地域の自由貿易圏に入る戦略的重要性を粘り強く説き続ける必要がある。
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