10月29日の昼過ぎ。愛知県蒲郡市にある愛知工科大学で、集まった人たちが食い入るように見入っていたのは、鹿児島・種子島宇宙センターでのH2Aロケットの打ち上げ。
「3、2、1」という掛け声の後、ロケットが炎と白煙を噴射しながら打ち上げられると歓声が上がりました。
みなさんが喜んだ理由。
それは、超小型衛星「がまキューブ」が、このロケットに載って宇宙に旅立ったからなんです。
蒲郡の「がま」と、立方体の「キューブ」から名付けられた手のひらサイズの超小型衛星「がまキューブ」。
宇宙での目的は?
「空を飛ぶときに、こんなに小さい人工衛星だと見えないんですが、これを自ら光るお星さまにすることで皆さんに分かるようにしたい」(愛知工科大学工学部 西尾正則 教授/去年4月の記者会見)
地上から約600キロ離れた宇宙で、強力なLEDから放たれる光を地上から肉眼で確認できるようにするといいます。
この壮大な計画は、蒲郡市内にある7つの町工場に勤務する金属加工の「匠」と、愛知工科大学とが協力して「がまキューブ」を共同製作し、進められています。
「宇宙にかかわるとわくわくするし、衛星づくりで地元の町工場が活性化していけばいいなと」(製作に携わった 伊藤智啓さん/去年7月の記者会見)
しかし、打ち上げに至るまでは苦難の連続でした。
設計変更を繰り返すなど試行錯誤を経て、今年8月ついに完成しました。
「もう無理かもしれないと、弱音を吐いたときもありましたが、ようやく乗せてもらえるところまで来ました」(愛知工科大学工学部 西尾正則 教授/今年8月の記者会見)
そして、10月29日午後1時8分。
地元の町工場と大学の思いを乗せた「がまキューブ」が、宇宙に向かって打ち上げられたのです。
「ほっとしております。子どもが旅立っていく、そんな思いを持っています」(製作に携わった 伊藤智啓さん)
「とても嬉しかったです。今後も成功してほしいと」(製作に携わった学生 浅井悠平さん)
打ち上げから約50分後にがまキューブは、ロケットから分離され、その後軌道に乗ったとみられています。
匠たちが宇宙にかけたロマン。そのロマンが「光」に変わる日を、心待ちにしています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181030-00010002-sp_ctv-l23