
三重県で、文化財修復の入札をめぐる贈収賄事件が摘発されました。逮捕されたのは亀山市役所の文化財保護のスペシャリストと、神社仏閣の建築や補修にあたる「宮大工」。背景には何があったのでしょうか…。
三重県津市にある真宗高田派本山の専修寺。去年、国宝にも指定された名刹の修復を手掛けたこともあるという宮大工。
(逮捕前の宮大工・今枝容疑者が広報誌に寄せたコメント)「自分の手がけたものが、後世に残っていくことがやりがいです」
贈賄の疑いで逮捕された今枝敏男容疑者(64)。そして…。
(インタビューに応じる逮捕前の亀山市役所・嶋村容疑者)「亀山市のシンボルなので、(復旧を)なるべく早くやりたいと考えています」
地震で崩れた街のシンボル「亀山城」の石垣の修復を、当時教育委員会の担当者として先頭に立って指揮した嶋村明彦容疑者(57)。
(記者リポート)「午後1時前です。嶋村容疑者の身柄が検察へと送られます」
市の幹部と宮大工の2人の間で起きた汚職事件。その舞台となったのは…。
(記者リポート)「市の文化財に指定されている、あちらの門の修復工事が今回の贈収賄事件のキッカケとなりました」
亀山市の「松風山福泉寺」。1795年に建てられた門は当時の楼門建築の様式を伝える貴重な建造物として市の文化財に指定されています。
この門の補修工事の入札があったのが、去年6月のこと。嶋村容疑者は文化財保護の担当としてこの入札に関わり、今枝容疑者に入札情報を伝えた見返りとして現金数十万円を受け取った疑いが持たれています。
その手口は非常に大胆なものでした。
(記者リポート)「こちらの寺で開札が行われましたが、その際には嶋村容疑者の他に寺の住職や他の市の職員も立ちあっていたということです」
入札には3つの業者が参加。入札書を開封すると今枝容疑者が下請けに入る業者の入札額は2番目の金額でした。
すると、嶋村容疑者は今枝容疑者に他社の入札額を教え、それより安くするよう指示。今枝容疑者側は再提出し落札したとみられています。
一方、2007年に亀山市の広報誌で紹介された今枝容疑者。かんなをひく笑顔が印象的です。
今枝容疑者を知る男性:「そんなことする人とは思えない。何かの間違いじゃないの?」
同容疑者を知る別の男性:「(今枝容疑者の)親が大工だから。仕事は文化財の建築とか寺院の屋根とか本堂直したり」
同容疑者の近所の女性:「こういう仕事をしてすごい人だと(近所で)話をした」
今枝容疑者を取り上げた亀山市の広報誌では…。
(今枝容疑者のコメント)「大きな社寺の建築に携わりたい。それには待っていてはだめで建築の現場に頼みに行ったり、宮大工としての仕事を数多くしていくことが大事」
宮大工のやりがいを語っていた今枝容疑者。一方で…
(同・コメント)「この仕事は働く時間が長くそれに対する報酬が伴わない」
業界の関係者によると、寺社の修復は檀家などの寄付が集まりにくくなり、ほとんどないのが現状。その中で、今回のように市の補助金が出る事業はどの業者も手にしたいものだといいます。
亀山市・桜井義之市長:「東日本大震災のときも茨城県桜川市の歴史資産修復で先頭に派遣した全国からの技術者のリーダーとして頑張った」
長く文化財保護に携わり、全国的にも知られる存在だったという嶋村容疑者…。
嶋村容疑者の近所の人:「普通の人だと思う。近所の組合のこともしてくれていた。(Q.金に困っていた?)ないと思いますけどね。そんなに派手でもないし」
警察は2人の認否を明らかにしていませんが、家宅捜索で押収した資料を基に容疑を裏付ける方針です。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181026-00005471-tokaiv-soci