観測史上最高の気温を各地で更新する、稀に見る酷暑に見舞われた今年の日本。気候変動はもちろん日本だけでなく世界各国を襲っています。
ですが未だに「気候変動は起こっていない」と主張する人もいますし、そうでなくとも「せいぜい暑かったり寒かったりするだけだろ?」という程度の認識の人はより多いのが現状と言えるのではないでしょうか。
しかし当然ながら気候変動は農業にも影響を及ぼし、私達の口にできる農作物や加工品にも打撃を与えます。
今回ジャーナル「Nature Plants」に掲載された研究によると、気候変動によってもたらされる極端な旱魃と熱波が大麦の生産量を世界的に激減させる可能性があるとのこと。
そうなれば、大麦はビールの原料であるため、世界的なビール不足と価格の上昇が引き起こされることになります。
研究者らによると、この大麦不足によって最悪でビールの消費量は16%まで減り、値段も倍近くまで引き上げられる可能性があると試算しています。より影響が少なかったとしても、4%の消費量減と15%程度の価格上昇が見込まれるとのこと。
なお、大麦でもビールに使われるのは最も質の良い一部分だけで、その割合はおよそ17%。残りは家畜向けの飼料となります。気候変動で大麦の生産量が落ちる時、最も影響を受けやすいのはそうした繊細で上質な部分となるため事態は深刻です。
研究者らはそうした影響を計るため、世界の34の地域の大麦の生産量を気候変動によって引き起こされる気象災害の影響を模擬計測しました。そしてその結果から導き出される大麦の供給量が各地のサプライチェーンや価格に影響するかを調べ、上記の結果を得ました。
もちろん、気候変動で影響を受けるのは大麦だけではありません。小麦やトウモロコシ、米と言った穀類や野菜、家畜向けの飼料にも影響を与えます。現在の気候変動が放置されれば発展途上国の貧困層を中心に数十万人規模の死者が出るとの試算もあります。
飢餓は社会不安を生み、暴動や紛争の火種になり得ますし、健康状態の悪化は疫病の蔓延を招く可能性もあります。
先進国でもビール不足を筆頭としたアルコール飲料の原料が不足することで禁酒法時代のアメリカ合衆国のような「闇市場」が発生し、反社会勢力の資金源となる恐れもあります。
気候変動は単に暑くなったり寒くなったというだけの話ではなく、食料生産にも大きな影響を与え、貧困国を筆頭に社会不安をもたらす可能性のあるものだという認識は必須。ある日これまで食べていたものがなくなり、できていたことができなくなるかもしれないということです。
このビール不足の予測についても「ビールがなければ日本酒を飲めばいいじゃない」で済む話ではないことがお分かり頂けましたでしょうか?
https://buzzap.jp/news/20181018-beer-shortage-by-climate-change/