涙の被害証言と完全否定 米最高裁判事候補の性的暴行疑惑で主張対立
2018/09/28 3時間前
ドナルド・トランプ米大統領に連邦最高裁判事として指名され上院の承認を待つブレット・キャバノー高裁判事(53)に対して、3人の女性が性的暴行被害を主張している問題で27日、被害を訴える女性とキャバノー判事がそれぞれ上院司法委員会の公聴会で宣誓証言した。クリスティーン・ブラジー・フォード教授(51)が、自分を強姦しようとしたのはキャバノー氏だと「100%」確信していると言明したのに対し、キャバノー判事はこれを全面否定した。
カリフォルニア州パロアルト大学で心理学を教えるフォード教授は、1982年にキャバノー氏に襲われたと名乗り出て公聴会で証言することになった心境について「怖くてたまらない」と述べながら、15歳のときの経験によって自分の人生が「激変」してしまい、長い間、「恐怖と恥ずかしさ」にさいなまれたと、時に涙をこらえながら語った。
自分を強姦しようとした人物がキャバノー氏だったという記憶に間違いはないかと質問されると、フォード教授は「100%」間違いないと即答した。
フォード教授の後に証言したキャバノー判事はこれに対して、複数の性的疑惑が取りざたされたことで自分と家族の生活は破壊されたと、激しい口調で涙ながらに訴え、フォード教授がつらい経験をしたこと自体は否定しないものの、自分は他人を性的に暴行したことなどまったくないと完全否定した。
公聴会の様子をホワイトハウスで注視していたとされるトランプ大統領はその後、キャバノー判事を最高裁判事として承認するのか上院は「投票しなくてはならない」とツイートで促した。
現在の最高裁判事はすでに保守派5人、リベラル4人で、保守派が優勢な構成になっている。最高裁判事の任期は終身なだけに、最高裁判事たちの政治的傾向が圧倒的に保守寄りになった場合、その判決はトランプ氏の任期満了後も長く米社会に影響を及ぼすことになる。
中略
<解説> 米国社会の対立点そのもの――ジョン・ソープルBBC北米編集長
今回の最高裁判事指名がいかに激しい感情や陰謀論、不信感と分裂をもたらしたか、十分に説明するのは難しい。
今の状況を理解するには、最高裁について2つの点を押さえる必要がある。まず判事の任期は終身だ。そして、米国の市民生活で特に対立の激しい問題(1950年代の学校人種隔離政策から人工中絶の合法化、銃規制に同性結婚など)について最終的な決定権を持つのは、政治家ではなく最高裁なのだ。
投票結果でもめにもめた2000年の大統領選で、最終的に勝者はジョージ・W・ブッシュだと判定したのも、最高裁だった。
要するに何でもかんでも、決めるのは最高裁なのだ。
2016年大統領選では、共和党員の多くがくさいものにフタをして、鼻をつまみながらドナルド・トランプを支持した。なぜかと言うと、保守派が圧倒的に優勢な最高裁を今後何十年もこれで確保できると、自分たちの長年の夢がこれで実現すると期待していたからだ。
その悲願が実現を目前に失われつつあると、保守派は恐れている。
そしてブレット・キャバノーを告発する女性たちが、このぎりぎりのタイミングで出現したことをとらえて、共和党関係者の多くは(そのほとんどが男性だ)、女性たちの訴えは正当なものではなく、民主党発の陰謀だと受け止めている。
50年にわたり米国社会でふつふつと煮えたぎってきた文化的対立は、実に稀有な局面で発火した。文化的保守派がMeToo運動と衝突したのだ。
そして、キャバノー判事と女性たちは、この戦いの巻き添えになったに過ぎない。
今日の公聴会の余波は、今後長いこと続くはずだ。
(英語記事 Brett Kavanaugh denies Christine Blasey Ford sex assault claim)
最高裁判事候補キャバノー判事(左)と、同判事による性的暴行被害を訴えるフォード教授が27日、上院司法委員会で証言した
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