◇殺傷能力あり
少年は高校2年だった2016年12月、高性能爆薬の過酸化アセトン(TATP)57グラムを製造し、17年2月、より威力のある爆薬・四硝酸エリスリトール(ETN)9グラムを製造したとして、爆発物取締罰則違反(製造・所持)容疑で今年8月20日に逮捕された。
爆薬は名古屋市名東区の当時の自宅で作ったとされる。今年3月の夜には名東区の公園で、TATPを誘爆させるため導火線の付いた黒色火薬を爆発させたとして、火薬類取締法違反容疑も持たれている。
県警は8月20日の逮捕時の捜索で緑区の少年宅から、拳銃1丁と市販の3Dプリンターを押収した。拳銃は完成品ではなかったが、発射機能が確認され9月7日に銃刀法違反(所持)容疑で少年を再逮捕した。
少年は母親と2人暮らし。通っていた高校の教頭は「成績は中くらいで、目立たない子だった」と語る。高校では2年生で科学関連の部活動に入部し、率先して先生を手伝うなど、積極的に活動していた。爆薬の原料について少年は「多くを高校で入手した」と県警に話しているという。高校によると、薬品は金庫に入れ、鍵を生徒に渡すことはなかったとしているが、一部の薬品が無くなっていた。
捜査関係者によると、少年は自宅近くの公園などで爆薬の爆発実験を繰り返しており、調べに「威力を確かめたかった」と供述している。TATPがテロに使われたことも知っていた。爆発の様子は動画で撮影し、インターネット上で知人と共有していたとされる。
拳銃については3Dプリンターで自作したと認め「悪いことをするつもりで作ったものではないことを信じてください」と述べた。
少年宅の捜索では、薬品類や手投げ弾のようなものも見つかった。県警は動機や製造の経緯を捜査するとともに、他の発見物の違法性を調べている。
◇テロ組織に取り込まれる恐れ
これまでの捜査で、少年に過激思想はうかがえず、興味本位で爆薬や拳銃を製造したとみられる。ただ、20年東京五輪・パラリンピックなどを控える中、県警幹部は「テロ組織に取り込まれる恐れもあった」と話す。
TATPは15年のパリ同時多発テロなどで使われたとされ、強い爆発力がある一方、原料の化学薬品は多くが市販され、製造方法もネット上で広まっている。また、複雑な形状のものを簡単に製作できる3Dプリンターは1台数万円で市販され、拳銃の設計図もネット上で入手できる。
横浜国立大先端科学高等研究院の三宅淳巳教授(火薬学)は「爆薬の原料はインターネットで購入できる。対面販売でも少量の場合は目的確認などが行われず、見逃されている場合が多いだろう」と指摘する。
ネット上で拳銃の設計図が見られることに関し、新潟大法学部の須川賢洋助教(情報法)は「データを選別して規制するのは技術的に難しく、表現の自由の規制につながる可能性がある」と話す。
テロ対策に詳しい日本大危機管理学部の河本志朗教授(危機管理学)は「誰もが爆薬や拳銃などを製造できる環境にあるが、製造する際は何らかの兆候がある。周囲の人間は、違和感を感じた際にすぐ警察に通報すべきだ」と語った。

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