県内各地の漁協によるアユの放流量が、この10年間で半減したことが11日、各漁協や県漁協連合会(県漁連)への取材で分かった。アユ漁の不振を背景に釣り客が減少し、各漁協とも採算が悪化。稚魚購入量を減らす悪循環に陥っている。ダムによって天然アユの遡上(そじょう)が阻まれる県内では放流が頼み。信州の夏の風物詩として親しまれてきた「アユの友釣り」の先行きを危ぶむ声も出ている。
県漁連などによると、県内で現在アユを放流する16漁協で2008年度に計3万3370キロだった放流量は、13年度に2万3千キロ余に減少。本年度は前年度比約1100キロ減の1万6510キロで、少なくとも過去30年間で最低だった。
これまで多くの釣り客が訪れてきた千曲川。上小漁協(上田市)の本年度の放流量は3350キロで、08年度の6千キロからほぼ半減した。
1987(昭和62)年度に延べ2万人を超えたアユの「日釣(ひづり)遊漁証」購入者は同約千人に減少。アユ釣り客の高齢化に加え、近年は「魚が釣れない」との声が相次ぐ。原因は、外来魚による食害や河川環境の悪化、異常気象などさまざまな指摘があり、毎年夏に上田市でアユ釣り大会を開いてきた大手釣り具メーカーも今年は開催を見送った。
松田耕治組合長(71)は「魚が生息しにくい環境になっていることは確か。これ以上放流量を減らせば、釣り客の評価はさらに下がる。一度離れた客はなかなか戻らない」とする。
千曲川水系では他に佐久漁協(佐久市)がこの10年間で放流量を4700キロから1400キロに、更埴漁協(千曲市)が4440キロから150キロに縮小。北信漁協(上水内郡飯綱町)は昨年、鳥居川での放流をやめた。
天竜川水系も同様で、放流量はこの10年間で下伊那漁協(飯田市)が7千キロから5340キロ、天竜川漁協(伊那市)が5千キロから3千キロに減らした。同漁協の小野文成組合長(69)は「先人が守ってきた夏の風物詩。何とか残さなければならない」と危機感を募らせた。
(9月12日) 信毎Web
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