2018年8月20日
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180820-OYTET50002/?catname=news-kaisetsu_news
認知症の前段階と言われる軽度認知障害(MCI)の女性は、男性より症状が悪化しやすいとの研究結果を東京大教授の岩坪威さんらのグループがまとめ、米科学誌に発表した。認知障害の悪化が速い女性には腎機能の低下がみられるという特徴もあり、生活習慣病の影響がうかがわれた。
研究の対象は、全国の38医療機関で診療を受け、物忘れなどがみられたMCIの男女234人(平均年齢72歳)。認知機能や脳の画像の検査を続けて3年間追跡調査し、悪化の原因などを分析した。
その結果、期間内に認知症へ移行したのは女性が60%で、男性の44%より高かった。女性の場合、腎機能がわずかに下がると、認知機能も悪化していることが分かった。
認知症発症の主な原因とされるアルツハイマー病にかかっている人の割合は、研究に参加した男女間で大きな差はなかった。同じ方法で実施された北米の研究では、認知機能の悪化に男女差はなかったという。
データ解析を担当した東大講師の岩田淳さんは「糖尿病や高血圧などの生活習慣病は腎機能を低下させるほか、動脈硬化を引き起こして神経細胞が壊され、認知機能の悪化を招く」と説明する。
そのうえで、男女差が生じた理由について、「女性は男性より体が小さいため血管も細く、生活習慣病で血管がダメージを受けやすいためではないか」とし、体格が影響しているとの見方を示した。