https://www.bbc.com/japanese/45040709
中央アフリカ共和国で露ジャーナリスト3人死亡 背景に疑問が
2018年08月2日
政局の不安定な中央アフリカ共和国で7月30日、ロシアの民間軍事会社について取材していたロシア人ジャーナリスト3人が車で移動中に襲撃、殺害された。
ロシアでは3人を追悼する声が上がっているが、その一方で3人の死の背景に疑問を持つ人も多い。BBCロシア語のエリザベータ・フォクフトとセルゲイ・ゴリャシュコ両記者が説明する。
何があった?
地元当局によると、著名な戦争記者だったオルハン・ジェマリ氏(51)、ドキュメンタリー監督のアレクサンドル・ラストルグエフ氏(47)、カメラマンのキリル・ラドチェンコ氏(33)の3人は30日午後7時(日本時間31日午前1時)、首都バンギから中部シビューへ向かう途中で殺害された。
夜間の移動は危険だという警告にもかかわらず、移動していたという。
3人は、中央アフリカ共和国で活動するロシアの民間軍事会社、ワーグナー・グループの戦闘員について調査していた。
ワーグナー・グループは過去に、内戦の続くシリアでの活動が話題となった。最近になって、中央アフリカ共和国でも活動している可能性が浮上した。
ロシア政府と政府高官は、戦闘員とのつながりを否定している。しかしロシア政府は今年2月、国連の許可を得た上で、中央アフリカ共和国軍の訓練と軍備強化のために教官180人を派遣している。
この調査取材は元企業家でロシアから亡命したミハイル・ホドルコフスキー氏が創設した調査管理センター(ICC)が3人に依頼したもので、3人はフリーランスとしてこの仕事を請けていた。
シビュー市当局によると、3人はターバンを巻きアラビア語を話す約10人の男に襲撃された。犯人らは車に発砲したか、3人を車外に連れ出し道端で射殺したという。
3人が乗っていた車の運転手は難を逃れ、通報した。
有能なジャーナリスト
・キリル・ラドチェンコ氏はチェチェン共和国やシリアで取材経験を積んだ、将来有望なカメラマンだった
・アレクサンドル・ラストルグエフ氏は、ウクライナ東部での紛争取材や、2011〜2012年のロシア反体制派デモを取材したインターネット・ドキュメンタリーで知られていた
・オルハン・ジェマリ氏はこれまでにリビアやシリア、ウクライナ東部、南オセチアといった紛争地域を取材し、経済紙コメルサントを含むロシアのさまざまなメディアで働いてきた。勇敢で冷静な戦争ジャーナリストとして知られていた。ウクライナでは戦闘の真っ最中に墓地から中継したと、記者仲間の間で語り継がれている
犯人は?
犯行の動機や犯人は明らかになっていない。
インタファクス通信は、強盗目的の犯行だった可能性があると伝えている。
3人の同僚によると、高価なカメラ一式と8000ドル(約90万円)以上の現金が現場からなくなっていた。
ロシア国営タス通信は、地元のイスラム武装組織セレカが関わっているとの憶測を報じている。セレカは2013年、当時のフランソワ・ボジゼ政権を崩壊させたが、その後キリスト教が大半を占める武装組織と対立し、不安定な政局を招いた。
国連は国連平和維持活動(PKO)のため同国に1万3000人を派兵しているが、苦戦している。
今回殺害された3人はなぜ、警備をつけなかったのだろうか?
中央アフリカ共和国でジャーナリストが殺されることはまれだが、ゼロではない。仏写真ジャーナリストのカミーユ・ルパージュ氏は2014年、取材中に殺害された。
ICCのアナスタシア・ゴルシュコワ副編集長は、ジャーナリストたちは同国で取材の準備段階で大きな困難に直面していたと話した。
ロシア語の通訳を探すのに数週間を要したほか、警備上のアドバイスをくれる人を見つけるのは不可能だと判明した。
そのため、経験豊富な戦争記者だった3人は単独で移動することを決めたのだという。
なぜ運転手は助かった?
襲撃時の全容が明らかになっていないが、3人を乗せていた車の運転手について疑問が浮上している。
ゴルシュコワ氏はBBCの取材に対し、襲撃の数日前、モスクワにいたICCの編集者がこの運転手について懸念を示していたと話した。
3人がホテル周辺で警察官に呼び止められ賄賂を払うよう強制された時、この運転手は警察側の通訳として支払いの交渉の間に入っていたようだったという。
しかしラドチェンコ氏が、運転手は警察のために働いているわけではなく警戒する必要はないとモスクワの編集者に保証したとゴルシュコワ氏は話した。
ロシアと中央アフリカ共和国の関係は?
(リンク先に続きあり)
(英語記事 Murder of three journalists shocks Russia)