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大阪北部地震 6割の病院が非常用電源点検せず
2018年7月18日 19時45分大阪北部地震
大阪府北部で震度6弱を観測した地震では、最大で17万件の停電が起きましたが、揺れが強かった地域にある病院のおよそ6割で、消防法で義務づけられた非常用電源の点検が行われていなかったことが、NHKの調べでわかりました。
多くの人が利用する病院や公共施設などでは、非常用電源の設備を作動させて行う「負荷運転」という点検や、機械内部の詳しい点検を一定の期間ごとに行うことが、消防法で義務づけられています。
NHKが先月の地震で揺れが強かった大阪府内の6つの市に情報公開請求して調べたところ、地震の前のことし4月末の時点で、およそ6割に当たる少なくとも138の病院で「負荷運転」が行われていなかったことがわかりました。
この中には、災害の際に救急医療の中核を担う「災害拠点病院」も3か所含まれていました。
災害医療に詳しい医師で、「人と防災未来センター」の甲斐達朗上級研究員は「多くの患者がいる病院で電源が落ちる事態は致命的で、重症患者は命を落とす可能性がある。点検は、停電した時に病院としてどう対応するかという訓練にもなる。金銭的なコストなど病院の負担も大きいが、実施を急ぐべきだ」と指摘しています。
5年以上点検怠る
大阪 吹田市にある国立循環器病研究センターは、地震が起きた直後、「非常用電源」が機能しない状況に陥りました。
病院によりますと、地震で停電が発生した際、非常用電源設備のうち、まず、バッテリーが作動し、非常用の発電機も起動させたということです。
しかし、停電が復旧したあとに外部の電力を取り込む設備に障害が発生しました。
さらに、非常用の発電機からも何らかの障害で電気が供給できず、わずかな時間しか稼働できないバッテリーだけに頼る状況になったということです。
結局、地震発生からおよそ3時間後の午前11時すぎに外部からの電気の供給が回復し、患者の容体に影響はありませんでした。
しかし、電源の問題に加えて、屋上にある貯水タンクが壊れたこともあって、人工透析が必要な患者など62人を別の病院に転院させたほか、外来の受付も一時できなくなりました。
病院は、電気が供給できなかった原因は調査中だとしていますが、法令で定められた非常用電源の点検を少なくとも5年以上、行っていなかったことを明らかにしました。
この問題を受けて、厚生労働省は、法令を守るよう病院に指導するとともに、非常用電源がある全国の病院に対し、電気事業法や消防法などに基づく点検が適切に行われているか、直ちに確認するよう通知しました。
地震きっかけに点検実施へ
今回の地震をきっかけに、点検の重要性を強く認識した病院もあります。
震度6弱の激しい揺れを観測した大阪 茨木市にある「ほうせんか病院」では、今回の地震で非常用電源に問題はありませんでしたが、3年前に電源設備を設置して以降、「負荷運転」は行っていませんでした。
病院は、これまで法令に基づく点検についての理解が十分でなく、そもそも非常用電源が動かない事態を想定していなかったといいます。
樋口昌克副理事長は「24時間電気が必要な人工呼吸器などは、停電時に備えて非常用電源専用のコンセントから電源を得ていますが、これが動かない可能性があるという認識は薄かった」と話しています。
この病院では、地震が起きる前のことし5月、屋上に設置している「非常用電源」の設備の点検を行うことを決め、業者との間で検討を進めていたさなかに地震が起きたということです。
今後、点検の実施を急ぐことにしています。樋口副理事長は「患者様の命を守ることはもちろんですが、この病院は災害時に被災された方々の二次避難場所としても活用されることもあると思います。
そのためにはしっかりと機能することが重要で、今回の地震をきっかけに点検の必要性を強く認識しました」と話していました。