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2018年04月24日 14時59分
ペットボトルのキャップを、投げる。ただそれだけのことに、己のすべてを賭ける19歳がいる。SNSで「わっきゃい」と名乗って活動する京都大法学部2年の日野湧也(ひの・わくや)さん。12歳の時に初めてキャップを投げて以降、「いつでも、どこでも、誰でも」できるキャップ投げに、文字通り「全力投球」してきた。今年10月にはイタリア・トリノで開催されるジャパンウイークに参加し、日本文化のひとつとしてキャップ投げを実演披露する。「キャップ投げの楽しさを世界中の人と共有したい」。熱い思いをキャップに込め、世界の舞台へと羽ばたく。
■11球種自由自在に、1日5時間練習も
キャップを右手の親指と中指で挟み、カメラを見据える。「ストレート、行きます」。弾かれたキャップが指先を離れ、高速回転しながらカメラめがけて飛んできた。速い。「真っすぐにはこだわりたいんで。もう一球、行きます」言うやいなや2球目を投げる。今度はど真ん中、カメラのレンズに直撃し、日野さんは満足そうだ。撮影しているこちらは、カメラが壊れやしないか心配になってきた。
チェンジアップ、スライダー、カーブ、フォークなど野球でもなじみのある変化球に加え、浮き上がる軌道を描くライジングボールまで11球種を操る。さすがはキャップ投げ創始者。「でも、僕より速い球、切れのある変化球を投げるキャッパーも居ます。キャップ投げを通じて、いろんなすごい人たちとつながれるのも楽しみのひとつ」と話す。
日野さんは1歳の時に家族で渡米し、17歳までロサンゼルス近郊で過ごした帰国子女。12歳の時の授業中、飲んでいたスポーツ飲料のキャップを手の中でもてあそんでいるうちに「これ投げられるかも」と思いつき、教師が見ていない隙をついて、教室の端に置かれていたゴミ箱めがけて「軽い気持ちで」投げてみた、という。キャップは教室の中を横切り、「シュッ」というかすかな音ともにゴミ箱の中に吸い込まれた。一瞬の出来事。「なにこれすごい。めちゃくちゃ気持ちいい」。その日からキャップを投げることに夢中になった。
「どんなに忙しくても、毎日必ず20分以上練習する」と己に課した日野さん。「広い場所で、なるべく風がないほうがいい」という理由から、自宅リビングを練習場所に選んだ。昼間は学校がある。夕方もなんやかやと忙しいので、必然的に練習は夜間に。夢中になりすぎて5時間以上もキャップを投げ続け、深夜に及ぶこともしばしば。「シンプルに、夜の練習が迷惑だったのだと思います」度々父親にキャップを捨てられた。それでも、ジュースを飲めばキャップは簡単に手に入る。来る日も来る日も、ひたすらにキャップを投げ続けた。
■日本帰国、ギャップに戸惑い
米国で育った日野さんだが、日本の大学で政治学を学ぼうと志し、17歳で単身日本へ。言葉、文化、生活習慣の違いよりも「日本と米国のペットボトルのキャップの違いに、一番ギャップを感じました」。米国のキャップは日本のものより平たくて大きく、「小さいフリスビーみたいな感じ」なのだという。まずは日本のキャップに慣れなくては。大学入試のための勉強の合間を縫い、再びキャップ投げの猛練習を始めた。
そして、2016年4月9日。自身のキャップ投げのすべてを注ぎ込んで1本の動画を編集し、ツイッターに投稿した。「キャップ投げ講座」と題した30秒ほどの動画は瞬時にSNS上に拡散し、再生回数はたちまち300万回を突破。「めっちゃ面白い」「わっきゃい、すごい」「キャップ投げやってみたい」。称賛するコメントがSNS上にあふれかえり「興奮しました。やっぱりキャップ投げってすごいよね、楽しいよね、って改めて実感した」という。
(リンク先に続きあり)
キャップを手に「世界中の人たちと楽しさを共有したい」と話す日野さん(京都市左京区・京都大学)