警察が調べを進めると、捜査線上にある人物が浮かんだ。
携帯電話キャリアから取り寄せた通話記録を調べたところ、
失踪当日に4回も紀子さんに電話をかけている男がいたのである。
その男は同年春ごろ、紀子さんの取材を通じて同業者として出会ったが、
「取材に関するやりとりで行き違いがあり、直接謝りたかったので呼び出した。
(発見現場の)駐車場で落ち合い、自分の車に乗せて1〜2時間話をした。
その後、駐車場から少し離れた県道沿いで降ろしたが、別れてからの彼女の行動は何も知らない」と供述している。
この男には当日のアリバイがなかったため、捜査関係者も事件解決に期待を膨らませたが、
目撃者や物的証拠が一切なく、逮捕には至らなかった。
それどころか、99年2月に東京都港区の女性を監禁したとして、"別件逮捕"(東京で起きた事件にもかかわらず
三重県警が拘留)されたが、裁判では無罪。
逆に警察が訴えられる始末となり、それ以降は所轄が手出しできない状況になっているのだ。
もちろん、"彼"が事件に関与しているかどうかは、当事者以外、誰も分からない。
そして、紀子さんが11年の時を経て存命であるのか、それとも......何らかの被害を受けてしまったのか。
三重県は全域で過疎化が進み、都市部から少し車を走らせれば山深く、伊勢港には外国船も頻繁に出入りしている。
そういった事情も災いしてか、失踪・誘拐などの未解決事件はあとを絶たない。
08年9月、紀子さんも"北朝鮮拉致問題"に関わっている可能性があるとして、
民間団体「特定失踪者問題調査会」の0番台リスト(北朝鮮に拉致された疑いを否定できない失踪者)に名前が載せられた。
このことで、ご家族の心情に変化が生じるとは到底思えないが。
紀子さんがいなくなってから3年が経ったころ、家族と友人の呼びかけにより、
彼女が旅を通じてフィルムに収めてきた記録を公開する写真展が開催された。
現在も、その記念碑としてホームページが残されていて、多くのジャーナリストが閲覧し、
紀子さんの学生時代・社会人における活動に賛同の意を表している。
彼女が撒いた"夢と理想"の種は、主人が留守にもかかわらず、大きな実をつけて育ち続けている。
http://news.livedoor.com/article/detail/4548214/