http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-43208840
2018/02/27
ケリー・アレン記者、BBCモニタリング
中国共産党は25日、国家主席の任期を2期10年までとする憲法条文を削除する改正案を発表した。この改正によって、習近平氏は任期が切れる2023年以降も、国家主席の座に留まれるようになる。
批判も多いこの発表を機に、中国のソーシャルメディアでは議論が沸き起こり、政府がインターネットの検閲を一気に強化した。
中国版ツイッターの新浪微博(シナウェイボー)では25日以降、複数のキーワードが突然、厳しい検閲の対象になった。
中国当局による検閲を監視するサイト「チャイナ・デジタル・タイムズ」と「自由微博(フリー・ウェイボー)」によると、検閲される表現はたとえば次の通り――。
賛成しない
移民
海外移住
再選挙
選挙期間
憲法改正
憲法規定
皇帝を自称
クマのプーさん
いったい何が起こっているのか。
国家主席の任期を2期10年に制限したのは1990年代から。毛沢東時代とその後の政治混乱の再発を防ぎ、権力の集中を避けるため、実験を握っていたケ小平氏が主席の3選を禁止した。
習主席は2012年に権力を握って以来、自分のルールを作る姿勢を積極的に示してきた。
しかし多くの専門家は、習氏が「終身皇帝」になる可能性を警戒している。任期撤廃で、中国の発展が100年後退するおそれがあるという批判も上がっている。
中国では、インターネットの監視と検閲に数百人を雇っている。そのため、次の2つのように明らかに批判的な投稿が、ブロックされるのは意外ではない。
「帝国主義の打倒に100年以上かかった。改革開放に40年。このような制度に戻るわけにはいかない」(菅原舜水さんの投稿)
「大多数の国で任期制限が非常に重視され、採用されている理由の一つは、色々な人々の意見のバランスを保つために、新しい血が必要だからだ」(Renzituo 2haoさんの投稿)
検閲当局は、歴代皇帝のほか、帝政を復活させようとした19世紀の軍閥総帥、袁世凱が、習近平氏を意味する暗号だと気づき、ブロックしている。たとえば、「ゆうべ、袁世凱を復活させる夢が母国に返ってきた」(張超洋さんの投稿)などだ。
主席の任期制限撤廃の発表後、検索エンジン「百度(バイドゥ)」で「海外移住」の言葉の検索数が急増したという指摘もあった。このため、「海外移住」に言及する投稿も検閲されている。
(キャプション)「ヤンフェイ」さんは「移住」という言葉が検索エンジンで急上昇したものの投稿が検閲されたと指摘する多くのユーザーの一人だ
ではいったいなぜ、検閲当局はクマのプーさんを目の敵にするのか。
実はネットユーザーたちが習氏につけたあだ名だからだ。しかも多くの場合、侮蔑的な意味合いで使われる。
シナウェイボーで「クマのプーさん」のフレーズを探すと、「関連する法規、規則、政策により検索結果は表示できません」というメッセージが出てくる。
その結果、シナウェイボーには「いいと思う」「支持する」など簡潔な投稿しか残らなくなった。
こうした短文投稿は、中国の「五毛党」によるものとみられる。政府の立場を支持するメッセージを投稿して小遣い稼ぎをしている、ソーシャルメディア・ユーザーたちのあだ名だ。
数千のコメントがついているのに、少ししか表示されない投稿は、検閲されたものだと分かる。
任期撤廃案が25日に発表された際の報道方法も、慎重に計画されたとみられる。
国営放送CGTNなど英語放送のメディアは主席と副主席の「2期10年まで」の任期制限が撤廃されたと大々的に報道したが、その中国語放送では取り上げなかった。
代わりに、国営放送CCTVは21項目の憲法改正案を全て伝えた。任期制限の撤廃は21項目の中の14番目だった。
中国国営の英字紙グローバルタイムズは、中国には2020年から2035年にかけて「安定し強力で一貫した指導体制」が必要だという、中国共産党のス・ウェイ氏のコメントを引用し、今回の改正は「中国の主席が生涯にわたって在任」するという意味ではないと主張した。
(英語記事 China censorship after Xi Jinping presidency extension proposal)
2018/02/27
ケリー・アレン記者、BBCモニタリング
中国共産党は25日、国家主席の任期を2期10年までとする憲法条文を削除する改正案を発表した。この改正によって、習近平氏は任期が切れる2023年以降も、国家主席の座に留まれるようになる。
批判も多いこの発表を機に、中国のソーシャルメディアでは議論が沸き起こり、政府がインターネットの検閲を一気に強化した。
中国版ツイッターの新浪微博(シナウェイボー)では25日以降、複数のキーワードが突然、厳しい検閲の対象になった。
中国当局による検閲を監視するサイト「チャイナ・デジタル・タイムズ」と「自由微博(フリー・ウェイボー)」によると、検閲される表現はたとえば次の通り――。
賛成しない
移民
海外移住
再選挙
選挙期間
憲法改正
憲法規定
皇帝を自称
クマのプーさん
いったい何が起こっているのか。
国家主席の任期を2期10年に制限したのは1990年代から。毛沢東時代とその後の政治混乱の再発を防ぎ、権力の集中を避けるため、実験を握っていたケ小平氏が主席の3選を禁止した。
習主席は2012年に権力を握って以来、自分のルールを作る姿勢を積極的に示してきた。
しかし多くの専門家は、習氏が「終身皇帝」になる可能性を警戒している。任期撤廃で、中国の発展が100年後退するおそれがあるという批判も上がっている。
中国では、インターネットの監視と検閲に数百人を雇っている。そのため、次の2つのように明らかに批判的な投稿が、ブロックされるのは意外ではない。
「帝国主義の打倒に100年以上かかった。改革開放に40年。このような制度に戻るわけにはいかない」(菅原舜水さんの投稿)
「大多数の国で任期制限が非常に重視され、採用されている理由の一つは、色々な人々の意見のバランスを保つために、新しい血が必要だからだ」(Renzituo 2haoさんの投稿)
検閲当局は、歴代皇帝のほか、帝政を復活させようとした19世紀の軍閥総帥、袁世凱が、習近平氏を意味する暗号だと気づき、ブロックしている。たとえば、「ゆうべ、袁世凱を復活させる夢が母国に返ってきた」(張超洋さんの投稿)などだ。
主席の任期制限撤廃の発表後、検索エンジン「百度(バイドゥ)」で「海外移住」の言葉の検索数が急増したという指摘もあった。このため、「海外移住」に言及する投稿も検閲されている。
(キャプション)「ヤンフェイ」さんは「移住」という言葉が検索エンジンで急上昇したものの投稿が検閲されたと指摘する多くのユーザーの一人だ
ではいったいなぜ、検閲当局はクマのプーさんを目の敵にするのか。
実はネットユーザーたちが習氏につけたあだ名だからだ。しかも多くの場合、侮蔑的な意味合いで使われる。
シナウェイボーで「クマのプーさん」のフレーズを探すと、「関連する法規、規則、政策により検索結果は表示できません」というメッセージが出てくる。
その結果、シナウェイボーには「いいと思う」「支持する」など簡潔な投稿しか残らなくなった。
こうした短文投稿は、中国の「五毛党」によるものとみられる。政府の立場を支持するメッセージを投稿して小遣い稼ぎをしている、ソーシャルメディア・ユーザーたちのあだ名だ。
数千のコメントがついているのに、少ししか表示されない投稿は、検閲されたものだと分かる。
任期撤廃案が25日に発表された際の報道方法も、慎重に計画されたとみられる。
国営放送CGTNなど英語放送のメディアは主席と副主席の「2期10年まで」の任期制限が撤廃されたと大々的に報道したが、その中国語放送では取り上げなかった。
代わりに、国営放送CCTVは21項目の憲法改正案を全て伝えた。任期制限の撤廃は21項目の中の14番目だった。
中国国営の英字紙グローバルタイムズは、中国には2020年から2035年にかけて「安定し強力で一貫した指導体制」が必要だという、中国共産党のス・ウェイ氏のコメントを引用し、今回の改正は「中国の主席が生涯にわたって在任」するという意味ではないと主張した。
(英語記事 China censorship after Xi Jinping presidency extension proposal)