「先生」と呼んで信頼していた人物が、もしあなたの身近な子どもに性的な行為を繰り返していたらどうすればいいだろうか。
教師による児童・生徒へのセクシュアルハラスメント、「スクールセクハラ」問題が広がっている。
2017年末、文部科学省が発表した資料によると、2016年度に性的行為等で懲戒処分された公立小中高校などの教職員は、全国で226人を数え、過去最多になった。
加害者である教師に口止めされたり、親を心配させまいとしたりと子どもが声を上げづらい構造があり、明るみに出るのは氷山の一角とされる。
セクハラ被害を受けた当事者の証言を中心に、この問題を考える。
■消えぬ悪夢
「今でも先生から逃げる夢をよく見るんです。できるなら人生をやり直したい」
関西に暮らす36歳の大橋葵さん(仮名)は、高校時代に男性教師から受けた性的行為に長く苦しめられてきた。
大橋さんの母校は全国的にも知られた名門の私立女子高校だ。
母子家庭で経済的に無理して進学させてもらった。
そこで入った運動系の部活で、当時40歳前後の国語教師が顧問をしていた。
先輩の話では結婚して娘もいた。
大橋さんが顧問の当時の写真を示しながら言う。
「生活指導部長をしていて、見た目はまじめそのものですよね。
授業も生徒への指導も熱い"熱血先生"として学校も重宝していたと思います」
彼女は1年生の秋、部のキャプテンに就任。
顧問からは「お前は出来の悪いキャプテンだ」「死んでしまえ」と罵声を浴びせられる一方で、練習後には「整体・マッサージを教える」と言われ、顧問が1人で使っていた部屋に引き留められた。
当初は互いに肩や腰のマッサージを促され、大橋さんは「私、どこも痛くないのに」と嫌悪感を覚えたが我慢していた。
次第に、互いの下腹部を触るような指示をされるようになった。
悪夢で跳び起きたり涙が止まらなくなったりし、体重は3カ月で5キロ落ちた。
それでも大橋さんは、部の運営に影響が出ないよう誰にも話すべきでない、と耐えた。
2年生の夏合宿では、顧問の部屋に呼び出された。
「スポーツをする高校生の女子の体を知る必要がある」と寝かされ、触られるうちに言われた。
「おっぱいも触るぞ」
大橋さんは体を硬直させたが、相手は「絶対的な人」。抵抗できなかった。
■心の中は黒い絵の具を混ぜられたように
最後の大会前、大橋さんは顧問から「明日は水着を着てこい」と命じられた。
恐怖を覚えて何とか断ったが、試合はあっけなく敗退。
顧問からは「キャプテンを代えておくべきだった」と吐き捨てるように言われた。
卒業してからも10年近く、元キャプテンとして顧問への年賀状を欠かさず、学校を訪れた際には必ず挨拶に行った。
そうしないと顧問が不機嫌になるからだ。
「マインドコントロールされ続けているようだった」と大橋さんは回想する。
当時、母親は面倒見が良い先生に恵まれたとして顧問に感謝していた。
学費を捻出するために必死に働き余裕のなかった母に対し「もし本当のことを知ったら娘の被害に気付けなかったことで苦しむのではないか」と思い、大橋さんは今も母親に自分が受けたことを明かせないままだ。
■写真
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Yahoo!ニュース 2018/2/20(火) 9:50
https://news.yahoo.co.jp/feature/887
※続きます