http://www.afpbb.com/articles/-/3162445?cx_position=26
【2月16日 AFP】胸部を9ミリの弾丸で貫かれたケント・ウィタカー(Kent Whitaker)さんは、病院のベッドに横たわりながら、家族を皆殺しにしようとした殺人犯への復讐を誓っていた。
しかし、ケントさんは今、その犯人を死刑から救おうとしている。その死刑囚が実の息子だからだ。
ケントさん(69)はAFPに対し、「罪を許すなどという考えは毛頭無かった」と語る。「何が起きたのか到底理解できなかったが、とにかく誰であれ、あの顔を隠した犯人を痛めつけてやりたいと思っていた。私の人生をめちゃくちゃにしたことに対する報復として」
2003年12月。ケントさんと妻のトリシア(Tricia Whitaker)さん、そして長男と次男の4人は、大学卒業を目前にした長男が提案した、家族揃ってのディナーに出かけた。ディナーを終えてテキサス州ヒューストン郊外のシュガーランド(Sugar Land)の自宅に戻った後、事件は起きた。
団らんは長くは続かなかった。何者かが突然押し入り、4人に向けて発砲したのだ。トリシアさんと次男ケビン(Kevin Whitaker)さん(19)は殺害され、長男も腕を撃たれた。
「信仰が揺らぎ、神への怒りを覚えた。このようなことが起きたというだけでなく、聖書に書かれていた約束と矛盾しているようで疑問を抱かざるをえなくなったことに。しかし神は、事件当日の夜、病院のベッドに横たわる私の前に現れた。そして関係する全ての人を許すという『奇跡』を起こすことを助けてくださった」
「そしてそれは、許すべきは自分の息子だと知るずっと前に起きた」
事件の黒幕が長男のバート(Bart Whitaker)であることがわかったのは、事件から1年後だった。長男は、捜査をかく乱するために意図的に腕を撃たせていた。
長男は実行役の男を雇い、いつの間にか憎しみの対象となっていた家族を皆殺しにするよう依頼していた。100万ドル(約1億円)の遺産を狙った犯行というのが検察当局の主張だ。
事件から7か月の間、長男は父親と一緒に住み続けた。警察が長男を疑うようになってからも、父親のケントさんはずっと息子を信じ続けたのだ。
■死刑宣告
捜査当局が、侵入者の目的が、当初疑われた強盗ではないと結論づけるのに時間はかからなかった。盗られたものは長男の携帯電話のみで、犯人が家に押し入ろうとした形跡もなかったからだ。
捜査の手が迫っていると察した長男は、2004年にメキシコに逃亡。偽名での生活を始めた。しかしその1年後、共犯者の一人が真実を話し、2005年9月に逮捕。米国に強制送還された。
2007年3月、長男は死刑を宣告された。死刑の回避を求めたケントさんの努力は実らなかった。
ケントさんは「妻と次男の死で私は打ちひしがれ、乗り越えるには何年ものセラピーが必要だった。そのうえ、将来起き得ることを考えるとさらなるカウンセリングが必要だった」と述べ、「そしてその時が来てしまった。死刑が執行されれば、私に残されるのはさらなるトラウマと絶望感だ」と続けた。
38歳になった長男は、2月22日に薬物注射による死刑が執行される。看守らは、バート死刑囚について協力的で利他的な模範囚だと述べている。
事件についての著書もあるケントさんは「長男は成長した」と語り、アンガーマネジメントや信仰の講義を受け、学士号を取得し、修士号の修了も目前だと説明する。
弁護団は死刑を回避する全ての手を出し尽くした。刑の執行は、州知事にゆだねられる。
弁護団のキース・ハンプトン(Keith Hampton)氏は、「想像してほしい。家族の中でもっとも愛する人2人を思い浮かべるとする。片方がもう片方を殺す。罰は絶対に必要だ」
「だが、あなたは処刑を求めるだろうか? その人物が、残された唯一の子どもだとしたら?」 (c)AFP/Sébastien BLANC
ケント・ウィタカーさんと長男のバート・ウィトナー死刑囚(2016年10月撮影)。(c)AFP PHOTO / FAMILY HANDOUT
【2月16日 AFP】胸部を9ミリの弾丸で貫かれたケント・ウィタカー(Kent Whitaker)さんは、病院のベッドに横たわりながら、家族を皆殺しにしようとした殺人犯への復讐を誓っていた。
しかし、ケントさんは今、その犯人を死刑から救おうとしている。その死刑囚が実の息子だからだ。
ケントさん(69)はAFPに対し、「罪を許すなどという考えは毛頭無かった」と語る。「何が起きたのか到底理解できなかったが、とにかく誰であれ、あの顔を隠した犯人を痛めつけてやりたいと思っていた。私の人生をめちゃくちゃにしたことに対する報復として」
2003年12月。ケントさんと妻のトリシア(Tricia Whitaker)さん、そして長男と次男の4人は、大学卒業を目前にした長男が提案した、家族揃ってのディナーに出かけた。ディナーを終えてテキサス州ヒューストン郊外のシュガーランド(Sugar Land)の自宅に戻った後、事件は起きた。
団らんは長くは続かなかった。何者かが突然押し入り、4人に向けて発砲したのだ。トリシアさんと次男ケビン(Kevin Whitaker)さん(19)は殺害され、長男も腕を撃たれた。
「信仰が揺らぎ、神への怒りを覚えた。このようなことが起きたというだけでなく、聖書に書かれていた約束と矛盾しているようで疑問を抱かざるをえなくなったことに。しかし神は、事件当日の夜、病院のベッドに横たわる私の前に現れた。そして関係する全ての人を許すという『奇跡』を起こすことを助けてくださった」
「そしてそれは、許すべきは自分の息子だと知るずっと前に起きた」
事件の黒幕が長男のバート(Bart Whitaker)であることがわかったのは、事件から1年後だった。長男は、捜査をかく乱するために意図的に腕を撃たせていた。
長男は実行役の男を雇い、いつの間にか憎しみの対象となっていた家族を皆殺しにするよう依頼していた。100万ドル(約1億円)の遺産を狙った犯行というのが検察当局の主張だ。
事件から7か月の間、長男は父親と一緒に住み続けた。警察が長男を疑うようになってからも、父親のケントさんはずっと息子を信じ続けたのだ。
■死刑宣告
捜査当局が、侵入者の目的が、当初疑われた強盗ではないと結論づけるのに時間はかからなかった。盗られたものは長男の携帯電話のみで、犯人が家に押し入ろうとした形跡もなかったからだ。
捜査の手が迫っていると察した長男は、2004年にメキシコに逃亡。偽名での生活を始めた。しかしその1年後、共犯者の一人が真実を話し、2005年9月に逮捕。米国に強制送還された。
2007年3月、長男は死刑を宣告された。死刑の回避を求めたケントさんの努力は実らなかった。
ケントさんは「妻と次男の死で私は打ちひしがれ、乗り越えるには何年ものセラピーが必要だった。そのうえ、将来起き得ることを考えるとさらなるカウンセリングが必要だった」と述べ、「そしてその時が来てしまった。死刑が執行されれば、私に残されるのはさらなるトラウマと絶望感だ」と続けた。
38歳になった長男は、2月22日に薬物注射による死刑が執行される。看守らは、バート死刑囚について協力的で利他的な模範囚だと述べている。
事件についての著書もあるケントさんは「長男は成長した」と語り、アンガーマネジメントや信仰の講義を受け、学士号を取得し、修士号の修了も目前だと説明する。
弁護団は死刑を回避する全ての手を出し尽くした。刑の執行は、州知事にゆだねられる。
弁護団のキース・ハンプトン(Keith Hampton)氏は、「想像してほしい。家族の中でもっとも愛する人2人を思い浮かべるとする。片方がもう片方を殺す。罰は絶対に必要だ」
「だが、あなたは処刑を求めるだろうか? その人物が、残された唯一の子どもだとしたら?」 (c)AFP/Sébastien BLANC
ケント・ウィタカーさんと長男のバート・ウィトナー死刑囚(2016年10月撮影)。(c)AFP PHOTO / FAMILY HANDOUT