安保理運営で発揮した手堅い手腕 12月31日で日本が非常任理事国の任期2年終了
産經新聞:2017.12.30 22:23更新
http://www.sankei.com/politics/news/171230/plt1712300012-n1.html
3月8日、ニューヨークの国連本部で北朝鮮問題に関して米韓の国連大使とともに会見を行う別所浩郎国連大使(中央)
国連安全保障理事会の非常任理事国を務めてきた日本は31日で2年間の任期を終える。
北朝鮮への対応では計6本の対北制裁決議を米国とともに主導。
安保理運営をめぐっては、手堅い手腕を発揮した。2022年の非常任理事国選挙(任期23〜24年)に向け、さらに存在感を増すことができるかが課題だ。
別所浩郎大使は空港から国連本部に直行
16年からの任期中、北朝鮮は挑発行為をエスカレートさせ、安保理の緊急会合は18回も開催された。
前駐韓大使の別所浩郎国連大使は着任した16年6月22日、ニューヨークの国際空港から国連本部に直行し緊急会合に出席。
北朝鮮問題に知見が深い別所氏の意見は、安保理内の議論で重視されていたという。
日本は北朝鮮問題への関心を高めるため、NHKカメラがとらえたミサイル画像を理事国に配布するなど、現実の脅威として扱うよう訴えた。
対北協議では過去に「米国が交渉相手の中国と、早く手を打とうとする」(安保理筋)傾向にあったが、日本はトランプ米政権と緊密に連携して「最大限の圧力」をかけ続けている。
「素晴らしかったのはバイブル作り」
日本が2年間で力を入れた一つが、安保理の運営方法の改善だ。
非常任理事国が任期をスムーズにスタートできるよう、準備のためオブザーバーとして参加できる期間を「6週間」から「3カ月間」に拡大させた。
常任理事国が舞台裏でまとめる例が目立つ決議案や議長声明案などの文案作成についても、各理事国が内容を検討するための「合理的で十分な時間」確保を求めた。
今年は、こうした改善点を含め、安保理運営のノウハウをまとめた「議長ノート」を10年以来改訂し、各国に配布した。
理事国のウクライナのイエルチェンコ国連大使は「日本の仕事で素晴らしかったのは安保理の透明性を高めるバイブル作りだ」と話す。
シリアの人道問題などをめぐり、決議案の起案国として協議を主導した日本は難しいかじ取りにも直面した。
シリアの化学兵器使用に関する調査機関の存続をめぐって米露が対立したため、日本が任期を30日間暫定的に延長する決議案を提出したところ、ロシアの拒否権発動で廃案となった。
日本の決議案にロシアが拒否権を発動した例は過去に1例ぐらいしかなく、異例の事態。
「ロシアの拒否権行使は残念だったが、シリア問題で米露の橋渡しを探るのは基本的な姿勢だ」と外務省関係者は明かす。
「安保理入りを意識しないと運動不足に」
22年の選挙で、12回目の再選を目指す日本の立場は厳しくなることも予想される。
これまで国連通常予算の負担率が米国に次ぎ2位だったが、19〜21年は中国が日本を追い抜くことが確実で、予算面での影響力低下は免れない。
「今後は常に安保理に入ることを意識していないと運動不足になる。発信力を高めるため同じ地域や価値観が近い国と一層連携することが重要だ」(外務省関係者)。5年後の選挙までの国連外交が、存在感を示すための正念場となる。