http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-42476518
ウゴ・バチェガ記者 BBCニュース(サンパウロ)
マリア(40)が自殺しようと思ったのは、夜も遅くなってから、自室で1人になった時だった。7階の窓から飛び降りて自殺しようと思った。いつものように部屋の扉の向こうで、夜明けから15時間も働き続けた後のことだった。2日もの間、何も食べていなかったので、体に力が入らなかった(文中敬称略)。
マリア(仮名)はこの2カ月前に、フィリピンからブラジルにやって来た。サンパウロの金持ち地域に住む家族に家政婦として雇われた。
雇い主の家族は、マリアにひっきりなしに仕事を与えた。
学校に通う子供3人と赤ちゃんがいたので、育児の手伝いをした。大きな食堂と応接間、個別のバス・トイレ付の寝室が4つある広いマンションの掃除も、マリアの仕事だった。さらに、飼い犬を散歩させて、子供たち全員を寝かしつけるのも彼女の役目だった。
女主人はふだん家にいて、マリアのやることなすこと全てを監視していた。ガラスのテーブルをしっかりきれいにしなかったと、マリアに1時間近くテーブルを磨かせたこともある。マリアがアイロンをかけた服の数を数えて、足りないからと、それから何時間もアイロンがけをさせたこともある。
雇い主は、何週間も休みなしにマリアを働かせた。やることが多すぎて、食事の時間もとれないのはしょっちゅうだった。与えられる食事の量が足りないことさえあった。
自殺を考えた夜、マリアはフィリピンの田舎にいる家族のことを思った。母親と幼い3人の娘たちのことを。娘の2人は心臓病で、特別な薬が必要だ。家族全員が自分の収入に頼っている。マリアは働き続けるしかなかった。なのでベッドを整えて、眠りに着いた。
「世界がぐるぐる回って、私は泣いていた」
マリアは自殺しかけた日のことをこう語る。ブラジルに来るのは夢だった。「ブラジルはいいところだと聞いていたので」。それなのに、なぜここまでひどく扱われるのか理解できなかった。
翌朝起きると、あまりの空腹におなかが痛かった。けれども、すでにその日の仕事は山積みだった。食べ物をやっと見つけたのは数時間後。飼い犬用の肉を調理して、その半分を自分で食べた。
(リンク先に続きあり)
(英語記事 Modern slavery: 'I had to eat the dog's food to survive')
2017/12/27
ウゴ・バチェガ記者 BBCニュース(サンパウロ)
マリア(40)が自殺しようと思ったのは、夜も遅くなってから、自室で1人になった時だった。7階の窓から飛び降りて自殺しようと思った。いつものように部屋の扉の向こうで、夜明けから15時間も働き続けた後のことだった。2日もの間、何も食べていなかったので、体に力が入らなかった(文中敬称略)。
マリア(仮名)はこの2カ月前に、フィリピンからブラジルにやって来た。サンパウロの金持ち地域に住む家族に家政婦として雇われた。
雇い主の家族は、マリアにひっきりなしに仕事を与えた。
学校に通う子供3人と赤ちゃんがいたので、育児の手伝いをした。大きな食堂と応接間、個別のバス・トイレ付の寝室が4つある広いマンションの掃除も、マリアの仕事だった。さらに、飼い犬を散歩させて、子供たち全員を寝かしつけるのも彼女の役目だった。
女主人はふだん家にいて、マリアのやることなすこと全てを監視していた。ガラスのテーブルをしっかりきれいにしなかったと、マリアに1時間近くテーブルを磨かせたこともある。マリアがアイロンをかけた服の数を数えて、足りないからと、それから何時間もアイロンがけをさせたこともある。
雇い主は、何週間も休みなしにマリアを働かせた。やることが多すぎて、食事の時間もとれないのはしょっちゅうだった。与えられる食事の量が足りないことさえあった。
自殺を考えた夜、マリアはフィリピンの田舎にいる家族のことを思った。母親と幼い3人の娘たちのことを。娘の2人は心臓病で、特別な薬が必要だ。家族全員が自分の収入に頼っている。マリアは働き続けるしかなかった。なのでベッドを整えて、眠りに着いた。
「世界がぐるぐる回って、私は泣いていた」
マリアは自殺しかけた日のことをこう語る。ブラジルに来るのは夢だった。「ブラジルはいいところだと聞いていたので」。それなのに、なぜここまでひどく扱われるのか理解できなかった。
翌朝起きると、あまりの空腹におなかが痛かった。けれども、すでにその日の仕事は山積みだった。食べ物をやっと見つけたのは数時間後。飼い犬用の肉を調理して、その半分を自分で食べた。
(リンク先に続きあり)
(英語記事 Modern slavery: 'I had to eat the dog's food to survive')
2017/12/27