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●遺族「遅すぎる」「組織罰を」
亡くなった松本玲さん(当時28)の父親の邦夫さんは「書類送検までに5年がかかったいうのは遅すぎるのではないかというのが偽らざる気持ちです。原因が明らかにされ、それに基づいてしっかりと責任が追及されることが私たちのいちばんの望みです」と話しました。
妻の和代さんは「なぜ事故につながったのか会社側の説明もなく明らかにされてきませんでした。どこに責任があったのかを司法の場で問う入り口にようやく来たので、今後、明らかにしてほしいです」と話していました。
亡くなった森重之さん(当時27)の父親の和之さんは「事故から5年が経過し、ようやくといった印象です。警察が集めた情報が裁判で明らかになってほしい」と話しました。
そのうえで「この事故は長年にわたって多くの人間が関与して起きた惨事です。『組織罰』ができるきっかけになることを望みます」と話し、個人だけでなく事故を起こした企業など組織そのものを処罰する法律の制定を求めました。
亡くなった上田達さん(当時27)の父親の聡さんは「事故から5年かかりましたが、ようやくといった思いです。刑事裁判で事故原因の真実が明らかになることを期待しています。事故を教訓に会社組織として安全が守られる仕組みを作ることが大切だと思います」と話しました。
そのうえで「息子たちの死のあと、各地で道路や橋の点検が行われ老朽化が明らかになりました。社会を動かしたという意味で息子たちは大きな仕事をしたと思います」と話しました。
亡くなった石川友梨さん(当時28)の父親の信一さんは「亡くなった9人の命をむだにしないためにも、そして、あのような悲惨な事故が二度と起きないためにも、真相が解明されればと思います」と話しました。
母親の佳子さんは「娘を失い暗闇に放り出された気持ちでした。5年はあっという間でしたが、何年たっても娘への思いは変わりません。公共的なインフラを管理する会社には安心・安全を最優先にしてほしいです」と話していました。
亡くなった小林洋平さん(当時27)の父親の寿男さんは「本当は事故原因を明らかにするのは簡単なことだと思いますが、会社側が口をつぐんでいるような気がします。真実はあるはずなので刑事裁判で実態を見て答えを出してほしいです」と話し、会社側の姿勢を批判しました。
●事故調査委も点検・管理不十分を指摘
5年前の平成24年12月2日の午前8時すぎ、山梨県大月市にある中央自動車道の笹子トンネルの天井板が140メートルにわたって崩落しトンネルを走行していた3台の車が下敷きになり、9人が死亡、2人がけがをしました。
トンネルは全長が4784メートルあり、昭和52年に完成してから35年がたっていました。
崩落した天井板は、トンネルの上部を換気通路として仕切るために設置され、1枚当たりの重さが1トン余りありました。
国土交通省の事故調査委員会は崩落の原因について、天井板や金具をつり下げていた接着剤を使ったボルトが抜け落ちたことによるものと結論づけ、設計や施工段階での問題点のほか、トンネルを管理する中日本高速道路の点検内容や維持管理体制の不十分さを指摘しました。
この事故で亡くなった5人の遺族が中日本高速道路などの責任を問う民事裁判を起こし、おととし横浜地方裁判所が「有効な点検によって事故は回避できた」と会社側の過失を認め、合わせて4億4000万円余りの賠償を命じる判決が確定しました。
一方、中日本高速道路と子会社の当時の社長など役員4人に対して賠償を求めた裁判では「役員らは天井板の構造や過去の点検結果などを認識しておらず、事故を予測できたとは認められない」と訴えを退け、ことし6月、遺族側の敗訴が確定しました。