<日産無資格検査>販売店や下請け企業に打撃
11/17(金) 21:26配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171117-00000109-mai-bus_all
国内全6工場を一時出荷停止にする異例の事態を招いた日産自動車の無資格検査問題は、販売店や下請け企業に打撃を与えた。日産は17日、再発防止策を発表したが、完成検査員を補充するなどして問題発覚前の出荷ペースを取り戻すには時間がかかるうえ、信頼の低下から販売への影響も尾を引きそうだ。
日産は無資格検査問題を9月29日に公表後、いったん体制を改めたとした後も一部の工場で無資格検査が続いていたことが判明。10月20日に国内向けの生産・出荷を停止し、今月7日から順次再開した。10月の国内新車販売台数(軽自動車を除く)は、前年同月比52.8%減と大幅に落ち込むなど大きな影響が出た。
首都圏の販売店従業員は、「出荷停止後に『納車の時期が分からないのは困る』『不祥事がまた出て信用できない』とお客様からおしかりを受け、キャンセルになるケースが続いた」と話す。
本来ならば、10月2日に旗艦車種の電気自動車「リーフ」の新型モデルが発売され、全体の販売台数を大幅に押し上げることが期待された。だが、出荷を再開した先週以降も、リーフの販売は思ったように伸びていないという。販売店従業員は「せめてリーフが他の車種の減少分の穴埋めをしてくれ、売り上げの落ち込みを防げれば良いのだが」と話す。
下請け企業への打撃も大きい。従業員約20人をかかえる関東地方の部品製造会社の社長は、「うちみたいな零細企業は日産と一蓮托生(いちれんたくしょう)で、今回のような不祥事はたまらない」と怒りをにじませる。
同社は、日産との取引が売り上げの半分以上を占める。国内市場でのシェア拡大を目指して日産が昨年ごろから進めた国内工場での増産に伴い、部品の発注量が増えて売り上げを伸ばしてきた。従業員を1人補充したが人手は足りず、「盆と正月の休みを従業員にとってもらうのがやっとというくらい好調」だったという。
しかし、日産の出荷停止で部品の納入は停止し、従業員には交代で有給休暇を取得させた。出荷再開後も日産への部品供給は停止前の水準に戻っておらず、「従業員まで増やしたのに、いつになったら元に戻るのか」と不安を募らせる。
日産自動車の山内康裕チーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)は17日の記者会見で、新車の完成検査を厳密にやるため、工場によって生産が2〜6割減少していることを明かした。完成検査員を増やすなどの対策が必要で、生産が不正発覚前の水準に戻る時期について「今年末から今年度いっぱいとみている」との認識を示した。【古屋敷尚子】
◇背景にコスト削減圧力
日産自動車の無資格検査問題の背景や再発防止策の実効性について、企業倫理や企業統治に詳しい明治大学商学部の出見世(でみせ)信之教授に聞いた。【聞き手・和田憲二】
問題の背景として、コスト削減圧力の影響は無視できない。1999年にルノー出身のカルロス・ゴーン最高執行責任者(現会長)が掲げた再建計画「日産リバイバルプラン」では、利益追求の不徹底が業績不振の一因とされた。そこから利益を最優先する意識が強まり、最低限の人員で生産性や業績をあげるため、自動化が進んで作業の負担が減ってきた完成検査よりも、他の業務に人を割り振るようになったのではないか。
かつての日産は、取締役の中に生産管理部長や工場長を兼務する人がいたが、99年の改革で取締役を37人から10人に減らしてからは、生産管理や品質管理は一段下の執行役員が担うことになった。このことからも技術や品質よりも利益や財務を重視しているように見える。経営と現場との距離がある中で現場に数字だけを示し、必達目標として守らせた。取締役会は、統治機能としては財務に偏っており不十分だ。
再教育や工程の見直しなど再発防止策は一定の評価ができるが、経営層や現場に「コスト」として意識されると再び同じことが繰り返される危険が残る。まず変えるべきは経営者の意識だ。
11/17(金) 21:26配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171117-00000109-mai-bus_all
国内全6工場を一時出荷停止にする異例の事態を招いた日産自動車の無資格検査問題は、販売店や下請け企業に打撃を与えた。日産は17日、再発防止策を発表したが、完成検査員を補充するなどして問題発覚前の出荷ペースを取り戻すには時間がかかるうえ、信頼の低下から販売への影響も尾を引きそうだ。
日産は無資格検査問題を9月29日に公表後、いったん体制を改めたとした後も一部の工場で無資格検査が続いていたことが判明。10月20日に国内向けの生産・出荷を停止し、今月7日から順次再開した。10月の国内新車販売台数(軽自動車を除く)は、前年同月比52.8%減と大幅に落ち込むなど大きな影響が出た。
首都圏の販売店従業員は、「出荷停止後に『納車の時期が分からないのは困る』『不祥事がまた出て信用できない』とお客様からおしかりを受け、キャンセルになるケースが続いた」と話す。
本来ならば、10月2日に旗艦車種の電気自動車「リーフ」の新型モデルが発売され、全体の販売台数を大幅に押し上げることが期待された。だが、出荷を再開した先週以降も、リーフの販売は思ったように伸びていないという。販売店従業員は「せめてリーフが他の車種の減少分の穴埋めをしてくれ、売り上げの落ち込みを防げれば良いのだが」と話す。
下請け企業への打撃も大きい。従業員約20人をかかえる関東地方の部品製造会社の社長は、「うちみたいな零細企業は日産と一蓮托生(いちれんたくしょう)で、今回のような不祥事はたまらない」と怒りをにじませる。
同社は、日産との取引が売り上げの半分以上を占める。国内市場でのシェア拡大を目指して日産が昨年ごろから進めた国内工場での増産に伴い、部品の発注量が増えて売り上げを伸ばしてきた。従業員を1人補充したが人手は足りず、「盆と正月の休みを従業員にとってもらうのがやっとというくらい好調」だったという。
しかし、日産の出荷停止で部品の納入は停止し、従業員には交代で有給休暇を取得させた。出荷再開後も日産への部品供給は停止前の水準に戻っておらず、「従業員まで増やしたのに、いつになったら元に戻るのか」と不安を募らせる。
日産自動車の山内康裕チーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)は17日の記者会見で、新車の完成検査を厳密にやるため、工場によって生産が2〜6割減少していることを明かした。完成検査員を増やすなどの対策が必要で、生産が不正発覚前の水準に戻る時期について「今年末から今年度いっぱいとみている」との認識を示した。【古屋敷尚子】
◇背景にコスト削減圧力
日産自動車の無資格検査問題の背景や再発防止策の実効性について、企業倫理や企業統治に詳しい明治大学商学部の出見世(でみせ)信之教授に聞いた。【聞き手・和田憲二】
問題の背景として、コスト削減圧力の影響は無視できない。1999年にルノー出身のカルロス・ゴーン最高執行責任者(現会長)が掲げた再建計画「日産リバイバルプラン」では、利益追求の不徹底が業績不振の一因とされた。そこから利益を最優先する意識が強まり、最低限の人員で生産性や業績をあげるため、自動化が進んで作業の負担が減ってきた完成検査よりも、他の業務に人を割り振るようになったのではないか。
かつての日産は、取締役の中に生産管理部長や工場長を兼務する人がいたが、99年の改革で取締役を37人から10人に減らしてからは、生産管理や品質管理は一段下の執行役員が担うことになった。このことからも技術や品質よりも利益や財務を重視しているように見える。経営と現場との距離がある中で現場に数字だけを示し、必達目標として守らせた。取締役会は、統治機能としては財務に偏っており不十分だ。
再教育や工程の見直しなど再発防止策は一定の評価ができるが、経営層や現場に「コスト」として意識されると再び同じことが繰り返される危険が残る。まず変えるべきは経営者の意識だ。