【ニューヨーク=高橋里奈】国連安全保障理事会は16日、シリアでの化学兵器使用疑惑を調べる国連と化学兵器禁止機関(OPCW)の共同調査を延長する米国の決議案を採決したが、否決した。ロシアが10月24日に続き再び拒否権を行使した。ロシアもシリアのアサド政権に配慮した別の延長決議案を提出したが、賛成票が足りず廃案となった。シリア危機を巡る米ロ対立が再燃した。
16日、記者会見するロシアのネベンジャ国連大使(ニューヨークの国連本部)
シリア危機を巡りロシアが拒否権を行使するのは10回目。共同調査を1年延長する米国案には英国やフランス、日本など11カ国が賛成したが、ロシアとボリビアが反対。中国とエジプトは棄権した。
17日に任期が切れる共同調査メカニズム(JIM)の延長案を巡っては、10月24日にもロシアが拒否権の行使で廃案に追い込んでいた。JIMは10月26日、アサド政権が4月にイドリブ県で化学兵器を使用したと安保理に報告。米国はJIMの任期切れ直前に再び延長案を示したが、またもロシアに阻まれた形だ。
米国のニッキー・ヘイリー国連大使は採決後、「ロシアは化学兵器攻撃の犯人を特定する国際社会の能力を積極的に妨げた」と述べ、「ロシアはアサド政権に忠誠を誓った。何という恥ずべきことか」と鋭く批判。ロシアのネベンジャ国連大使は「米国案は全くバランスがとれていない」と反発した。会議はいったん中断し、米ロの非難合戦が続いた。
トランプ米大統領も採決前、ツイッターに「アサド政権が二度と化学兵器で大量虐殺を試みることがないよう、安保理の全理事国がJIMを更新するために投票する必要がある」と投稿していた。
ロシアは「シリアの協力を歓迎する」とした決議案を採決前に撤回したが、ボリビアが採決を求めた。中国など4カ国が賛成したが、米英仏など7カ国が反対、日本など4カ国が棄権した。期限延長に向けて交渉が今後も続くとみられる。
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